漆黒の悪魔の体躯が少女の白い身体を隠している。捩れた角の生えた頭を少女の胸に埋め、獣が水を舐めるような音を立てながら、真っ赤な舌がそこを味わっていた。
刺激が少女の胸の頂きを硬く持ち上げ、つんと立ち上がったそれに触手のように舌を絡める。胸の膨らみに舌を押し付けると肌が沈み込み、押し返す弾力を弾くように舌を動かすとウィーネの溶けたような声がアシュマの耳を楽しませる。戯れるように唇で咥えて、食べ物か何かのように食んで吸い上げる。その刺激にウィーネの意識が遠くなる。愉悦が吸われて引き出されるようなそれは、鋭い感覚なのに意識を混濁させた。
休む暇など与えることなく、アシュマの指はウィーネの深い部分を探り広げ、胸に触れていた舌は下腹へと下りてきて直接味を味わう。
ウィーネはまだ挿れられてもいないのに、指と舌だけで何度も何度も昇らされた。足の付け根は零れ落ちる蜜だけでどろどろになり、指を引き抜いてはそこに付いた粘ついた液を見せ付けられた。
「3本目だウィーネ」
「んや……やあ……」
膣内がひくひくとうごめいているのが分かる。アシュマの指が自分の中を掻き分けるようにじたばたと動いていて、3本の指がかわるがわるウィーネの好い部分を引っかいた。その度に身体が跳ね上がり、足がぶるぶると震えるのを止められない。悦がぞくぞくと背を駆け上がり、肺に渡って、喉が軋むように甘く痛む。
言葉で嫌だと拒絶してみても、ウィーネは知っている。自分のここは、アシュマのもっと猛々しいものを受け入れる事が出来るのだ。奥に触れて欲しいと、素直に口に出来れば思い切り触れてくれるだろうか。だが怖くてそれをお願いできない。そんなことをお願いすれば、悪魔に近い生き物になってしまいそうだったし、愛されてもいないのにこうした行為に感じるなんて、自分がとてもひどい人間のように思われた。
だが、身体はどうやったって目の前の悪魔の手を求める。
「アシュマ、お、く……」
「奥が、なんだ」
「は……ぁ……」
それでも言えない、言わない……ウィーネに焦れてアシュマが指の動きを止めた。下腹を手の平で揉むように動かして、やわやわとした刺激に変える。途端に、ああ……とため息を吐いてアシュマを見上げるウィーネの瞳が、熱く溶けそうに見えた。
それを見ていると、アシュマのイラついた気分が少しだけ収まった。悪魔の欲しいものをウィーネが与えているように思えるからだ。
それが何なのかは分からないが。
アシュマは挿れている指の動きを止めて、ウィーネのふとももをそろえて持ち上げた。剥き出しになった入り口に己の剛直を触れさせる。何度か擦りつけながら、持っていたウィーネの足の膝を腕にかける。
にゅちにゅちと、先走りと蜜液が混ざり合って音を立てた。先端がくぷりと入ろうとするがその寸前で止まり、裂け目に沿わせて何度も往復させる。その度に先の部分でぐりぐりとちいさな蕾が擦られ、そのもどかしい刺激にウィーネがアシュマの動きに合わせたように、ため息に似た嬌声を上げる。
「あ、あ、……アシゅ、マ、そ、やっ……」
「脚を閉じろ、ウィーネ」
命じて、アシュマは抱えていたふとももを抱き寄せて閉じさせた。丁度アシュマの欲望がウィーネのふとももに挟まれたような形になって、そのまま擦り付けるように前後に動かし始める。
「……あ、アシュマ?」
挿入せずに、それを思わせる動きを始めたアシュマを見て、ウィーネが切なげに眉を下げた。いまだ余裕のあるように見えるアシュマは、ウィーネのふとももに己を挟んだまま激しく打ちつけ始める。前に動くと、ぐり……と蕾が押し潰されて、痺れて瞼の裏が熱くなる。
それだけでぬめりが増え、乱れるウィーネにアシュマがニヤリと嗤った。
「挿れてもいないのに」
「……あっ、あっ、や、あっ……」
「ウィーネ……ああ……お前の身体はどこも気持ちがいい」
アシュマの動きが早くなって、刺激が強くなる。それだけでウィーネの頭が霞んでいき、ふわりと感覚が宙に浮いた気がした。甘い嬌声を上げてしまうと同時に、熱いものが腹の上にドロリと出される。気がつけばふとももに挟んでいるアシュマの禊が、びくびくと白濁を吐き出していた。飛沫はウィーネの胸の辺りまで濡らし、それを見下ろしながら、「は」……と悪魔が1つ息を吐く。
「あ、アシュマ……?」
一体何をされたのか、ウィーネにはよく分からなかった。状況を認識する前に、ぐい……と背中をすくわれて身体を起こされる。悪魔がこんなもので満足するはずがなく、ウィーネの頭が掴まれて、いまだ猛ったままのアシュマのものに近づけられた。
「次はここだ」
「ちょ、……んっ、あしゅ、やっ、」
何をさせようとしているのか分かって、ウィーネは咄嗟に顔を逸らした。だが無理矢理押さえつけられた顔は逃れられず、吐精したばかりのアシュマのものが唇に触れて、ぬるりと擦りつけられる。
「ウィーネ……早く」
重低音がウィーネの耳朶に流れ、片方の手が耳をそろりと撫でた。「んは……」と思わず甘い声を上げてしまい、唇が開いた途端にねじ込まれる。
「ん……ん……む ……」
口を使った抽送が始まる。どうしてもウィーネはそれを吐き出すことが出来ず、とうとう受け入れてしまって舌を絡めた。何度か教えられたように掬うように舌で側面を包み込み、出し入れの度に先端をちろりと舐める。あまり激しくして欲しくなくて、思わずアシュマの腰にすがったら無理矢理押さえつけている手がゆるくなった。
アシュマの手がゆるくなってもウィーネは口を外さなかった。……アシュマの手がやさしく黒髪を撫で始めて、外すことができなかったのである。舐めているアシュマの欲は熱くて、温かくて、ぬるぬるしていて、……悪魔の味がする。舌を動かすたびにびくりびくりと腰が揺れるのが分かって、こんな悪魔がウィーネの拙い口淫で何かを感じ取ってるのかと思うと、不思議な気分になってくる。
少し唇の締まりをきつくすると、頭をなでているアシュマの手が止まり、再び押さえつけられた。
「……は……あ……ウィーネ……!」
アシュマの動きが早くなった。ぐちゅっぐちゅっ……とウィーネの唾液が音を立てて唇からこぼれ、それがしばらく続いて口の中を占めているものが脈動したのを感じた。途端にアシュマがウィーネの口から己を抜く。どくっ……と2度目の精が吐かれ、それは……
「んんっ……!」
顔がぺたりと濡れて、ウィーネは我に返った。思わず眼を閉じてしまったが、顔をぺたぺたとさわりながら恐る恐る自分の手の平を見てみる。当然のようにそこには悪魔の吐いたものが、どろりと付いていた。顔に出されたのだ。
「え……」
先ほどまでの甘い雰囲気を吹き飛ばして、ウィーネの顔がみるみる不機嫌になった。
「ひどい! お風呂入ったばっかりなのに……」
「ん? 口の中がよかったのかウィーネ」
くく……と笑いながら、アシュマは満足気にウィーネの頬を撫でた。その指を首筋、胸元、腹へと下ろしていく。身体のあちこちがアシュマが吐いた精で汚れていて、徐々に乾き始めていた。
「汚れてしまったな」
「……なっ、誰のせいだと思ってるのよ!」
「我のだな」
「……!」
「我のものでお前の身体が汚れている」
一切悪びれることなくアシュマは言い放ち、膝立ちのままウィーネを抱えて片方の腕に乗せた。子供のように抱えられて、慌ててウィーネが離れようとする。だがアシュマは難なく寝台を降りて立ち上がった。ウィーネは落ちないように思わずアシュマにしがみつく。
「……汚れてしまったのなら、もう一度風呂に入らねばな」
「は……」
はあ?
どうやら悪魔は風呂にウィーネを運ぼうとしているようだった。
****
かつて人間に化けたアシュマにシャワールームへ連れ込まれ、身体中を洗われたことはあった。
……が。
「ちょっとアシュマっ、離れて自分でやる、下ろしてぇぇむぐぅぅぅ」
「暴れるな、まったく」
呆れたようにアシュマがウィーネの顔を濡れタオルで拭いた。
たった今、ウィーネは洗い場に胡坐を掻いて座っているアシュマの膝の上に乗せられていた。離れの浴室はかなり広いが、悪魔の射干玉の身体がそこに座るとまったく広く見えなかった。アシュマはウィーネの二の腕を蝙蝠羽の鍵爪でしっかりと掴んで動けなくすると、温かいタオルで顔を拭いてやった。ウィーネがタオルを顔に当てられてむぐむぐと唸っていると「息を止めて眼をつぶれ」と言われ、ざー……と頭からお湯を掛けられた。
ぷるぷると頭を振って顔をぬぐい、「ひどい!」と声を荒げる。
しかしアシュマは無視して、花の香りのする洗髪料を手にとりウィーネの髪を撫で始めた。しゃくしゃくとアシュマの指がウィーネの髪を通り、泡立てていく。暴れると洗剤が眼や口に入ってしまうので、ウィーネは黙り込んで眼を閉じるしかなかった。
「あ、あ、アシュマ、もういいから、頭、はやく」
「まあ、待て」
アシュマはウィーネの閉じた瞳に手を当てると、ウィーネの顎が持ち上がった。天井に顔を向けた状態で、額からシャワーでお湯を流していく。眼をふさがれているからお湯は眼の中に入らず、相変わらずやさしい手つきでアシュマのごつごつとした長い指がウィーネの髪を梳いている。不覚にもうっとりと心地よく身をゆだねてしまった。
ウィーネが思わず身体の力を抜くと、瞼を覆っていた手が退いた。急に光が入ってきてまぶしげに瞳を瞬かせると、身体が持ち上げられてアシュマの顔が近付く。
唇が触れ合い、ちゅ……と音を立てて離れた。
遠慮がちで可愛い口付けに、助かった……とウィーネがほっとすると、もう一度重なった。
「ウィーネ、身体を洗わねば」
「んぅ、む……んんー……」
重なったまま唇を動かしてアシュマが楽しげに言った。いつの間にやら手に持っていた石鹸で、ウィーネの身体を撫でさする。腹と胸とふとももを特に重点的にさすられ、時々胸の頂をかすめていくとウィーネの腰がひくりと震える。その動きにあわせて、アシュマが片方の指でウィーネの入り口を押さえつけた。
「もう挿いりそうだ、ウィーネ」
口付けたままウィーネに問い、アシュマは身体を離した。その言葉にウィーネの顔が驚愕の表情に変わり、それをいかにも楽しげに見遣るとアシュマはニヤリと嗤った。
「な、ちょ、っと、ここお風呂よなに考えてっ……!」
ウィーネを抱き抱えるとアシュマは立ち上がった。ウィーネの脇を鍵爪で支えて持ち上げ、ふとももを両腕で抱えれば、既に勃ち上がっているものが狙いを定めるのは簡単だ。アシュマがウィーネの身体を下に下ろすと、少女の身体と悪魔が繋がりあった。
まだその夜は1度も挿れていないそこは、十分に潤っていたが常よりもきつかった。反抗するようにアシュマを押し戻そうとするが、入り口を通ってしまえば、今度は誘い込むようにきつく締まり、逃すまいと吸い付いてくる。
奥まで飲み込むと、一度ウィーネが鈴の鳴るような声を上げ、身体を襲う感覚を堪えるようにアシュマの胸に額を押し付けてきた。それを鍵爪の付いた羽で包み込む。
「あっ……やぁぁん」
「ああ、声……もっと聞かせろ」
「んぁ……ああ……やあ……」
「そうだ、もっと」
高い位置におびえたウィーネが、懸命に腕を伸ばしてアシュマの背に回す。それを合図に、アシュマは立ったまま軽々とウィーネの身体を揺らし始めた。小さなウィーネの身体はアシュマに繋がれて持ち上げられたまま、いいように動かされる。振り落とされないようにしがみついていると、頬にアシュマの胸板が触れ、そこは硬くてごつごつしていて温かい。
リズミカルな動きがもたらすどろどろとした愉悦に身を委ねかけていると、アシュマの剛直がウィーネの一番感じる部分を思いきり突いた。
「ああっ……あぅっ」
「はっ……まだ締まるな」
締まる。……ウィーネ自身にも分かるほど、中が動いてアシュマの物を締めつけていた。そうなれば余計に互いを擦りあう力が強くなり、そのくせウィーネの中は柔らかく濡れていやらしく纏わり付いた。ねちゃねちゃと粘ついた音を立てている。
「ん……絡み付いて、……ウィーネ……」
再び狙いを定めて動かすと、ウィーネの声が高くなり身体が反れて震えた。その動きを逃さないようにアシュマの抱く腕と羽が強くなり、は……とアシュマが息を吐いた。一際大きく腰を打ち付けると、ぐちゅっ……と音がしてアシュマの動きがゆっくりになっていく。ウィーネの腰から、つう……と白い液が零れて伝い落ちた。
「こ、こ、おふろって、い、いったのに」
「場所など関係ないと、何度言ったら分かる」
ふ……と嗤ったアシュマは、情欲に塗れた紅い瞳でウィーネを見下ろした。荒い息を吐いているのはウィーネを抱えていた疲労などではなく、興奮からだ。
「また汚れてしまった」
抱えている腰に、つつ……と指を触れると、中に吐き出したものがこぷこぷと溢れている。
「汚さないようにしなければ」
意地悪く言って、アシュマはウィーネのそこから零れ落ちてしまわぬように、己のものを再び挿れてしまった。「あぅぅ……」と切ないとも悦びとも取れる声で、ウィーネがアシュマに抱きつく。抱きつかれる瞬間がたまらない。アシュマはウィーネの身体を確かめるようにいちどきつく抱き締め返すと、そのまま湯船にざぶんと入った。
2人分の質量を迎えたお湯は当然勢いよく溢れたが、悪魔はそんなことは気にしないのだ。
****
先ほどまでアシュマはウィーネに挿れっぱなしで、長いことゆっくり動かしていた。だが、湯にあてられたウィーネがくたりとしたのを見て、やっと己を抜いて抱え直す。
いつもは抵抗して身じろぎをするウィーネだったが、抱き直したアシュマの腕の力に甘えるように擦り寄ってきた。
「ウィーネ? のぼせたのか」
「んん……」
ウィーネは眠そうだった。お湯の温度にのぼせたのもあるだろうが、アシュマの腕に抱えられているから……ということもある。ウィーネは大変悔しがるが、アシュマに囲われているのは少女を安心させた。
「ウィーネ」
アシュマは何度も召喚主の意識を呼び戻す。
「初恋」とやらは逃したかもしれないが、ウィーネの身体は自分しか知らない。この柔らかい肢体、この中に閉じ込められている感情は、これから先、アシュマという悪魔にしか汚されない。それでいい。他の誰にも渡さない。そう考えれば考えるほど飢えを覚える。
「ん……もう、むりアシュマ……」
「まだ足りぬ」
「おねが、い」
アシュマにはまだまだ足りなかった。足りないものは魔力ではない。すでにウィーネの魔力は心いくまで貪った。ウィーネの中には悪魔の強力で熱い魔力が注ぎ込まれていて、甘やかさと混じりあって溶けている。アシュマはウィーネの身体を横抱きにして、湯から上がった。脱衣所も廊下も素通りし、身体も拭かずにまっすぐに寝室へと向かう。
寝台へ着いたころには、ウィーネの身体はすっかりと乾いていた。
漆黒の体躯が白い少女を掻き抱き、狭い寝台の上でもつれあうように転がる。アシュマは悪魔だ。普通の人間のような体力的限界や精力的限界があるはずが無い。
「もう魔力は要らぬ」
「アシュマ……」
「その代わり今度はお前が欲しい」
「ど、いう、いみ」
問われてアシュマは首をかしげた。腕の中のウィーネを引き上げて、自分の漆黒の胸板に乗せる。その上に上掛を掛けてやって、両腕を回してぎゅう……と抱える。
「お前が、欲しい」
それの意味など知らない。
アシュマの腕がウィーネの腰に下りてきて、再びその身体を愛でようと動き始めた。ウィーネの幾度も達した身体は疲れ果て、ぼんやりとアシュマを見上げている。
ウィーネに、悪魔の言っていることは分からなかった。さんざんあんな風にしておいて、まだ自分が欲しいという。アシュマにとって何が足りないのだろう。使い魔が召喚主に求めているもの、魔力……闇の界、契約……そこに含まれる、アシュマの求めるものとは一体何なのだろうか。
これ以上ウィーネに何かあるとは思えなった。
だから。
いまだ力強い熱い眼差しで自分を見下ろしてくるアシュマの身体を這い登って、ウィーネは顔を近づけた。その様子に、僅かにアシュマが首を傾げる。
「ウィーネ……?」
「……ぅ、ん」
ウィーネの柔らかい唇が、アシュマの唇に押し付けられた。小さな舌が慎ましやかに重なった箇所を舐めて、くにゅ……と侵入してきた。
その行為に、悪魔が瞳を見開く。
闇の界、上位2位の悪魔の意識が、完全に出遅れた。
どこか呆然とウィーネの行為を受け止めていると、ぬるぬると拙い動きでアシュマの唇をひとしきり探り、ゆっくりと少女の舌が離れていった。アシュマが我に返りそれを追いかけようとした途端、かくん……とウィーネの顔が首筋にずり落ちる。
「ウ、ィーネ」
「アシュマ、これ、で」
「ウィーネ、……起きろ」
「や」
「ウィーネ、ダメだ」
「んん……やぁ……、も、ねむ……、の」
これをあげる。だから、もう寝るの……そう言って、ウィーネの吐息が健やかになった。抱き過ぎて意識が薄くなったのか、混濁しているのか。……しかし、ウィーネははっきりと、自らの意思でアシュマに口付けた。逃してしまったそれが、もう一度、欲しい。
「ウィーネ、ウィーネ・シエナ」
すがるように名前を呼ぶ。
夜に向けられたウィーネの笑顔。たった今与えられたウィーネの口付け。少女のそんな控えめな行動が、狂いそうなほどの欲情を生み出して悪魔を惑わせる。
グル……と喉の奥から、悪魔の唸り声を響かせた。このままで終わらせてなるものか、貪らなければ気がすまない……という感情と、大人しく自分の腕の中で眠る少女をこのままずっと閉じ込めて、飽くことなく眺めていたい……という感情。相反する二つの感情が沸き起こり、常に冷静で闇の界上位2位に相応しい出で立ちと振る舞いの悪魔を……困惑させた。
紅く燃える双眸が、怒りにも愛しさにも、どちらにも感じられる光を湛えて少女を見下ろした。思わずその細い手首を掴む。
するとウィーネが、アシュマの腕に擦り寄った。
「……いて、そば……」
その言葉を聴いて、悪魔はどれほど少女を見下ろしていただろうか。アシュマはウィーネの手首から手を離した。代わりに大事に大事にその身体を両腕に抱えて、自らの胸に引き寄せる。
狂おしい渇望も感じるのに、何かがどこかを満たしている……そんな満足感もまた、感じるのだった。