教える悪魔と召喚主

いじわる

ふにゅふにゅと、少女の柔らかな胸を悪魔の硬い指先が捏ね回す。ふっくらと形のよいそれにアシュマの指先が沈み込み、覆っている下着は隠す意味を為さずに、透けている様が逆にその下の肌の色を想像させる。

「あ、やっ」

「ウィーネ、……こんな格好をして、我を誘惑する」

「ふ、あ、だって、アシュマ、が」

「何も着ていないよりも、よほど、悦い」

いつも着けているものより頼りないそれは、いつもとは異なり手を侵入させなくても胸の形がはっきりと分かる。薄い布ごしに撫でていると指先でウィーネの胸の先が、くつんと立ち上がったのが分かった。それが余計にアシュマの手触りを煽る。

「ん、ん……アシュマ、や、め、やだ」

「は……ウィーネ、硬くなって、ここが……分かるか?」

「わか、ない、わかんない」

「ならば、触れてみろ」

「いやっ」

アシュマはウィーネの手を持ち上げると、胸を下から掬い上げるように触れさせた。今は本性を現してウィーネよりも2周りは大きい悪魔の手は、少女の小さな手などすっぽりと包み込み、無理矢理柔らかな胸を触らせる。ウィーネの指がレース越しに先端を引っかくと、思いがけぬ刺激に「ああう」と小さな声を上げてしまった。そこはもっと触れろと言わんばかりにふっくらと形を為していて、ウィーネの指の隙間を縫って、アシュマの指がかしかしと引っ掻き始めた。

「んっ、ふ、あ……」

アシュマは執拗にそこばかりを弄り、時折仰け反るウィーネの耳元を咥えた。ぴちゃぴちゃとわざと音を立てて、舌でそこを濡らす。上に、下に、ウィーネを責め立てる甘く痺れるような刺激に、下腹の奥が熱くなった。

「あ、あ、アシュマ、」

「ん……う」

アシュマが喉の奥からくぐもった唸り声を上げて、舐めていた耳を甘噛みし、く……と吸い付いた。途端に、細く甘い声でウィーネが啼く。

「も、や……ちから、はいらな」

「抜けばいい、我に全てを預ければいいのだ」

「だって、も、むり」

「何が」

言いながら、アシュマが片方の手を胸から離し、下へと下ろした。下着は余りに薄く、少女の控えめな秘裂がうっすらと透けている。幾度かなぞればじわりと蜜が溢れ、それに気をよくしたようにアシュマが囁いた。

「ここは濡れているのに、何が無理なのだ」

指が下着の中に入り込み、今度は直接触れ始めた。裂け目に添わせて指を埋め、少し奥から蜜を掬い出す。かくんとウィーネの腰が引けたが、アシュマはきつく抱き占めてそれを支えた。掬い出した甘い蜜を擦り付けると、花芽の部分がぷくりと膨れる。くに……と押さえつけては揺らし、粘液を頼りにその弾力を楽しんだ。

「んあ、あっ……あしゅ、アシュ……マ……」

「ここに」

「ふぇ」

「我のが、入る。ウィーネ」

「や、だぁ」

「嫌、ではない、悦んでいる。……確かめてみるか?」

「ん……あ……?」

アシュマは少し背を浮かせると、大きく羽を広げてそれを前に下ろした。後ろから抱えたウィーネの足を大きく開かせて下着を片方抜き、膝を太い鉤爪で押さえつける。

「や、何するのっ、ちょっと……あ」

恥ずかしい格好にさせられ、ウィーネは慌てて自分の身体を支える鉤爪を手で押しやるが、どうしたって動くはずが無い。ぺちぺちと腕や羽を叩いてみても、どうということもない。ウィーネは腕を掴まれて、先ほどと同じように手の平を包み込まれた。

「触れてみろ、ウィーネ」

「何を、や……っ、」

アシュマはウィーネの指を自分の指で挟むと、それを少女の秘奥へと持っていった。ウィーネの指が自分の、その部分に、触れる。

そこは、いつもアシュマが言うようにとろとろと溶けていて、ぬめりのある蜜のような液に塗れていた。アシュマの指がウィーネの指に重なり、押さえつけて動かされる。その度に濡れる量が多くなり、ぴちゃぴちゃといやらしい音が部屋に響く。

「は、あ、……あ……」

いやなのに。
はずかしいのに。

ウィーネの身体に力が入らず、濡れている自分のその部分に集中してしまう。頭の中は白く甘くさっきの飴菓子のように溶けているのに、くにくにと自分の指とアシュマの指が押さえて動かす花芽の膨らみが、今自分にどういう悦を与えているのかがはっきりと分かった。

あふあふと息を継いでいると、その顔を興奮気味に見下ろしていたアシュマがさらに指を強く絡めた。

「はうっ……あっ」

くちゅん……と音がして、アシュマの指がウィーネの指を深いところに押し入れた。少女の指が自身の蜜壷の中に、ぬるりと入ってしまう。思わず引き抜こうとしたが、悪魔の指がそれを許さず、「暴れるな、傷つく」……と、行為とは真逆の優しい声で囁いた。傷つくなら止めてくれたらいいのに、悪魔の手は意地悪く少女の手を押さえたままだ。

「ほら、入っただろう」

「ん、あ、や、だあ、いやあ……」

「ここに我のが入る。お前と我の指だけで、こんなにきついのに」

ぷちゅ、くちゅ……といやらしい音を立てながら、ウィーネの指を中に納めたまま、アシュマが指を動かし始めた。親指で器用にウィーネの手を押さえてしまっていて、今、ウィーネの膣内なかは、ウィーネの指とアシュマの指が入っていて、動かされている。

アシュマの指が少し引き抜かれると、ぴちゃ……と音がして、外に蜜が溢れた。く……と中に戻ってくると、そのままウィーネの指を押さえ付けてうごめいている内壁を一緒に擦られる。その刺激がウィーネの背に伝わり、ぞくぞくと震えてしまう。

「は、ああ……」

「奥、は、ここからもう少し、だ」

だがウィーネの指が邪魔で届かない。もう少しで触れられそうなのに、触れられないもどかしい切ない刺激がウィーネにも分かった。

「む、り」

「そう、無理だ……今は。しかし我のならば、奥まで届く」

くすくすと笑いながらアシュマの唇がウィーネの髪を撫で、やがて、じゅぷっ……と音がして、激しくアシュマの指が動き始めた。

「あっ」

「ウィーネ、力を抜け」

「んっ、あ。や、あ……っ」

激しい水音を響かせながら、ウィーネの指を残したままアシュマの指が往復する。寝台を濡らすほどの液が溢れ、太ももの内側がべたべたになっていた。ウィーネの声が苦しげな呼吸音に変わり、身体がぴんと跳ねてしまう。空いている方の手が支えを求めるようにさまよっていたが、後ろ手にまわして思わずアシュマの首に触れる。

すがりつくように首にまわされた手に、理性の溶け切った悪魔の瞳が甘く揺れ、呼ばれるように顔を下ろす。

「んっ、んん……っ」

互いの唇が触れ合い、舌が絡まりあう。アシュマの手が音を立てて動いていたが、やがてウィーネの身体が一瞬硬く震えて、くたりと力が抜けた。はあはあと息を吐くウィーネの唇がずるりと落ちるようにアシュマから離れ、崩れる身体が黒い腕に抱き止められる。

達した余韻にいまだひくひくと動いている中の感触をぐるりと一度味わってから、ウィーネの指と共に引き抜いてやった。ウィーネの指はぬらりと濡れていて、もったいない……とばかりにアシュマがそれを口に含む。ぼんやりとウィーネがそれを見上げていると、ちゅ……ちゅ……と小さな音と共に指を吸いながら、ニヤリと嗤った。

「我には、こちらの方が美味だ。……ウィーネ」

言いながらアシュマは、そっとウィーネの身体を寝台へ横たえた。いまだ、ウィーネの身体の奥はじくじくと熱く、足りないものを求めるように疼いている。あんな風に自分の指でさせられて、すごくすごく恥ずかしくて、でもどうしても自分の中に集中してしまって、達する瞬間の自分の中がどんな風に動くか、知らされて、それなのに。

まだ。

「まだだ」

「……あ」

ウィーネ自身の情欲を分かっているかのように、アシュマがそうっと頬をなでた。ウィーネに寄り添い、その身体を閉じ込めるように腕の中に抱き込んで、耳元でやさしくやさしく誘惑する。

「ウィーネ、どれがいい。指か、舌か、」

「どうして……」

そんな意地悪を言うの。

分かっているくせに、あんな風に教えたのはアシュマのくせに、いつもは問答無用で貪るくせに、今日はとても意地悪だ。

―――― 奥は、ここからもう少し
―――― 我のならば、奥まで届く

アシュマしか知らないウィーネの奥に、思い切り触れて欲しかった。中を埋めて欲しかった。指だけじゃ物足りない。自分ではダメ。それを今更、こんな風に思い知らせるなんて。

あふん……とウィーネの瞳に涙が浮かんで、震える唇で悪魔を呼ぼうとする。

「あ、あ……」

「言え、お前のその唇から」

いまだ躊躇う様子を見せる少女の唇を幾度も指でなぞりながら、悪魔は求められる瞬間を待った。いつもならば待たないのに、今はどうしてもこの少女の唇から自分を求める言葉を聞きたい。目の前にある極上の少女。問答無用で貪ればいいのに、今はどうしても己の名を呼ばせたい。

「アシュマ、の、で、奥……触ってよう……」

「ああ……そんな目で見るな、ウィーネ・シエナ」

我慢出来なくなるだろう。

潤んだ瞳で自分を見上げる愛らしい少女の身体を開くと、悪魔は一気に自分を突き立てた。大きく硬い悪魔の欲望は少女のもっとも好い部分を抉り、互いに引き込まれるように最奥を味わう。

「アシュマ、あ、アシュマ……」

ウィーネの手がアシュマに抱きつくように背中に回され、何度も何度もその名前を呼ぶ。悪魔の逞しい首筋に額を預けて、黒い鋼の肌を確かめるように唇を押し付けた。ウィーネの中は、受け入れているアシュマの硬さと激しさばかりを感じていた。自分だけではどうしても足りない何かをアシュマが満たしている、……そんな感覚が今にも溢れそうだ。

目の前の黒い異形は恐ろしい悪魔のはずなのに、……触れていると、抱き付いていると、交わっていると、何もかも放り出して全てを預けたくなる。

深くて高い愉悦が身体を這い登る。

「私、もう……も……うっ……あああっ」

「ああ、……ウィーネ、ウィーネ、……分かっている……っ……」

悪魔の動きが激しくなれば、少女の奥もとくとくと脈打ちそれに応える。幾度か互いの身体を叩き付けると、熱い飛沫が吐き出された。それを飲み込むように膣内なかがこくりこくりと動く。

アシュマは小さく震えるような声を吐くウィーネを抱きしめながら、いまだ止まらぬ白濁を注いだ。一滴も零さぬようにゆっくりとした動きに変えながら、とろけるような柔らかい余韻を楽しむ。

愉悦に堕ちるのは少女だけではない。

柔らかいウィーネの身体はアシュマの剛直を受け止めて、奥に留まらせようとでもするかのようにきつく温かく吸い付く。何もかも壊しそうな激しい情欲と同時に感じるのは、それとは真逆のぬくぬくとした心地よさだった。

戯れにウィーネの肌を飾り立て、戯れにウィーネの指を使って教え込んだ。そうしていると、いつものように羞恥に抗うかと思っていたウィーネは、いつもよりもずっと甘くて慕わしい魔力をアシュマに向けてきたのだ。アシュマは喉を鳴らしてそれを楽しむ。恥ずかしがってなんとか離れようとするくせに、その羞恥を超えてアシュマを求めてしまう、いじらしい少女の動きが悪魔の心を激しく揺さぶった。

アルバースの日などどうでもよかった。

2人をつなぐ使い魔と召喚主という関係すら、今はどうでもいい。ただ、ウィーネを味わうことが出来れば、それで。

「お前は我の……我だけのものだウィーネ。お前の何もかも」

それならば、2人をつなぐものは一体何であるのが相応しいのか。

今は、ただ身体をつなげ、魔力をつなげる。その奥の何かを求めれば身体が疼くが、その欲望すら互いを求める糧にして、悪魔は少女の甘い身体を心いくまで味わった。

****

「機嫌を損ねたのか、ウィーネ」

寝台の上でウィーネはアシュマに背中を向け、頬を膨らませて柔らかな枕に顔を埋めている。

「ウィーネ」

まるで機嫌を取るかのように黒い羽の片方がゆっくりと動いて、甘い声で囁くアシュマが後ろからウィーネの身体を包み込んだ。それでもウィーネは膨れっ面のまま、こちらを向こうともしない。

それでも構わず、ちゅ……と小さく髪に口付けを落としていると、「ううぅー」と唸り声が聞こえた。

「アシュマ、の」

「ん?」

「アシュマのいじわる」

すん……と鼻をすする音が聞こえて、アシュマが首を傾げた。「ウィーネ?」と無理矢理ウィーネの身体をひっくり返し、黒い瞳を覗き込む。

「意地悪か」

「だっ、て」

むぅぅ……と唇を尖らせたまま、再びアシュマに背を向けようとする。腕を緩めてやると、やはりアシュマに背を向けて、またも枕に顔を埋めた。

「あんな、の、使い魔の糧に、か、かんけいない」

「そうだな関係ない」

「ど、して」

関係ないのに、どうしてこんなことをするの。糧も魔力も関係ないのに、どうして?

質問の全てを口には出さなかったが、「どうして」とだけ問うウィーネの背中を緩く抱き寄せた。ウィーネの言う通りだった。糧も魔力も関係ない、ただ、ウィーネにこうしたいだけ。

「お前を見ていると、こうしたくなる」

「どういう意味?」

「意味?」

アシュマにとって、既にウィーネとの交わりは魔力との交換というだけの意味は為さなくなっている。そうした「意味の無くなったこと」の意味を、アシュマは知らない。しかし、そんな意味など知る必要も無い。なぜ、人間というのはこのように意味を問いたがるのか。

「どうして、使い魔なのに」

懸命にウィーネが言い募っている。だが、ウィーネの質問の意図がアシュマには分からない。アシュマとウィーネは確かに使い魔と召喚主という関係だ。そこに別の意味が加わると、何かが違うと言うのだろうか。それは、たとえばアシュマが欲しいと思っているウィーネの奥にある何か……を得ることにつながるのだろうか。

しかし、ひとつだけ分かっている事がある。

「お前は特別だ」

「……え?」

他のどのような存在も、ウィーネの代わりにはならない。

悪魔は戸惑う少女の気持ちなどお構いなく、柔らかで甘い身体を抱きこんだ。魔力を味わうように少女の身体の香りを吸い込み、異形の肺を満たす。悪魔の長い生の中で少女の存在が居なかった時の方がよほど長い。それなのに、その時間を自分はどのように満たしていたのか、悪魔は思い出すことが出来なかった。

****

アルバースの日の翌日は、魔術学校の校内もどことなく砂糖のような甘い雰囲気が漂っている。ネルウァの機嫌も上々で、女子生徒を連れて意気揚々と食堂へと姿を現した。食堂の端の席には、ウィーネの腰を堂々と抱いてなにやら耳元に囁いているアシュマがいる。ウィーネは相変わらず近寄ってくるアシュマの顔を避けているが、どことなく諦めたような雰囲気でもあった。

ほほう、これはこれは。

「……もしかして、付き合うことにしたの、お前ら」

「どこをどうしたらそうなるのよ、付き合ってなんか……」

「まあ、そういうことだ」

「なっ……」

ネルウァの問いに、今までは「ウィーネとは恋人などという関係ではない」と首を振っていたアシュマが頷いた。それを聞いたネルウァが、へえ……! という顔をする。ネルウァの連れている女子生徒も、周囲の生徒たちも、ちらちらと3人の様子を伺っていた。これは、ネルウァなどが口を開かなくても、すぐにも学校中に噂が広がるだろう。

「なるほど、アルバースの日はうまくいったんだなアグリア」

「まあな」

とはいっても、結局はアシュマが捕食者でウィーネが被捕食者である有様は、変わっているようには見えなかった。ただ、ネルウァもそれ以上は男のたしなみとして突っ込まず、ふむふむと頷き身体を引く。男同士2人で勝手に納得している様子に、ウィーネが慌てて口を挟んだ。

「だから、ちょっと待って、何言ってるの、つきあってなんか」

「ウィーネ・シエナ、行くぞ」

「どこに!」

「本を買い忘れたのだろう。……それじゃあ、セルギア」

「おうよ、ごゆっくり」

ウィーネとアシュマは揃って席を立ち、ネルウァとその連れを残して食堂を後にした。

仲良く恋人の手を引いて先を歩くアシュマに、ウィーネが耳打ちする。

「ちょっと、どういうつもりよ、アシュマ!」

「何がだ」

「つ、つきあ、ってるって」

アシュマが足を止める。丁度階段の影で、他の生徒からは見えない死角の位置だ。アシュマは、ふん……と笑って、ウィーネの横髪をそっと指に掛けた。その仕草に、ウィーネの心臓が跳ね上がる。

どういうつもりなのか、この悪魔は。

今まで「恋人」とか「付き合ってる」とか、そんな関係は否定してきた。2人が使い魔と召喚主である限り、それを言い訳にして、ウィーネは自分の心から逃げることが出来るからだ。それなのにいまさら恋人だと公言されると、見て見ぬ振りをしてきた自分の気持ちを、突きつけられる事になるではないか。だって相手は人間ではない、悪魔なのだ。普通じゃない。

困惑しているウィーネを、アシュマがそっと覗き込む。

「……そう言っておけば、妙な生徒につきまとわれなくてすむ」

妙な生徒に、つきまとわれなくてすむ?

……それを聞いて、ウィーネの肩から力が抜けた。

「なんだ」

「何だ?」

「別に……」

はふう……と、安堵の息を吐く。色々なことを考えてもやもやしていた自分が馬鹿みたいだった。結局はそれだ。「恋人」なんて言うのは……アシュマが他の女子生徒から、声を掛けられないようにするためだ。「付き合っている女子生徒が居る」という噂が広がれば、余計な声を掛けられる事は減るだろう。最近は少なくなったとはいえ、ユール・ログの舞踏会のように誘われる時も無くは無い。

ほっとしたような気もするし、もやもやとした痛みもまたあった。だが、その気持ちにウィーネは安心して蓋をする。

ふいに思い出す。

お前は特別だ。

召喚主だから、特別?
魔力が、特別?

相手が使い魔ではなかったら、ウィーネはどうするだろうか。

ウィーネが召喚主でなかったら、アシュマはどうするだろうか。

そんなことを悶々と悩んでいると、アシュマの不埒な声が聞こえてきた。

「ほう、ウィーネ、我が買ってやった下着を着ているな」

「なっ」

かあああああ……とウィーネの顔が赤くなった。気が付くとアシュマがブラウスの隙間に指を突っ込んで、ちらりと中を確認しているところだった。ウィーネはアシュマの手をぺちんと叩いて、乱れたブラウスを引き寄せて直す。

「やめてよ。別に見せるためじゃないわ、……せっかく買ってくれたから……」

「ああ、後でよく見せてもらおう、ぴったりだっただろう」

「聞いてるの? だから別に見せるためじゃないってば!」

「そうだ、ウィーネ、他にもあるからまた着てみるといい」

「は? 他にも? どういうこと、ねえ、ちょっと!」

きゅ……とアシュマがウィーネの手を握って、購買へ向かって歩き始めた。「他にもあるってどういうことよ!」とうるさいウィーネの声を楽しげに聞きながら、例の店からたくさん買い込んだ下着のリストを頭の中に思い描いていく。清楚なもの、華やかなもの、先日着ていたみたいな色めいたもの……実用的なものから、そうでないものまで。

ウィーネとアシュマの関係に、「恋人」……などという人間が用意した浅はかな関係性を当てはまるなど無駄なことよ。……そう思っていたが、それでウィーネに男が寄りつかなくなるならば結構なことだ。

それに、まあ、別段悪い気はしない。

指を絡めてアシュマがウィーネの手を握り直すと、ウィーネの指がそれに寄り添った。相変わらず満足気な悪魔と少しだけ切なげな召喚主だったが、その距離は近付いたのか、遠ざかったのか。


「なあ、アグリア。お前ウィーネに何贈ったんだよ」

「ああ、……」

「マジで!? 高度すぎるだろ!」

「小さくて高価なものと言っただろう」

「どこをどう解釈したんだよ!」

……という男共の会話があったとか無かったとか。