獅子は宵闇の月にその鬣を休める

013.繋がる

飽きることなく、何度も何度もアルハザードとリューンは身体を求めあった。

いや、求めたのはアルハザードで、応えているのはリューンだ。だが、どちらが求めたか、どちらが溺れているかなどもはや関係なかった。何度達してもまだ足りない。アルハザードは何度も何度もリューンに自分を繋げた。

今もまだその部分から淫猥な音が響いていて、寝台が軋む音は止まらない。何度目かに達して、ようやくアルハザードは自分を抜き、肩で息をしているリューンを抱き寄せた。彼女は決して嫌とは言わない。言えないのかもしれないが、それをいいことにアルハザードはリューンを蹂躙し続けている。

「リューン……水を飲んでおけ」

アルハザードはリューンの唇に水を注ぎ、それを飲ませる。

水を飲んで少し休憩している間、アルハザードはじっとリューンを見つめていた。それにはリューンも気付いているが、視線がいたたまれなくてアルハザードを見ていられない。

それにしても……アルハザード自身の体力は、なんというか、すごい。リューンの身体にできるだけ負担にならないよう、動いているのはリューンではなくアルハザードだったが、ずっと責められ続けた身体は、かなり軋んでいて明日が怖い。それでも、嫌か、と言われると嫌ではない。声は上げていないのに、彼の手は驚くほどリューンの快楽に反応する。気持ちいいと思うと、その心を読んだようにじっとそこを責めてくるのだ。

ふと、アルハザードの身体の傷痕が目に入って、思わずそれに触れた。

「……?」

「……あああ、ごめんなさい嫌だった?……」

眉をひそめて、アルハザードはびくりと身を引いたので、リューンもハッとして手を引いた。アルハザードは無論、嫌だから身を引いたのではない。好きな女に身体を触れられて嫌な男があるものか。

アルハザードの手がリューンの身体に触れればその身を震わせるくせに、逆もそうさせるなどとは、彼女は考えないらしい。アルハザードはリューンの手を引いて、自分の身体の傷に触れさせた。触れた瞬間、びくりと手が揺れるが嫌がったりはせず、つ……と、その傷をなぞった。

「怖いか?」

「いいえ。なぜ」

「身体の傷跡は戦場で出来た傷だ」

「それは分かるけど、なぜ?」

「女は普通、こういうものを怖がるだろう」

「私がその場にいたら治せたのになあと思うけれど、怖くは無いわ」

「そうか……」

その手がなぞると、甘い衝撃が身に走り、その言葉を聞けばこれが愛しさというものか……という想いが募る。

アルハザードがリューンを求めても、彼女は自分を求めない。それでもかまわないと、アルハザードはここに来るまで、そう思っていた。

だが、彼女はアルハザードに「応えることができないのに、与えられるだけなのはつらい」と言ったのだ。アルハザードがリューンに悦びを与えているのであれば、それが例え、自分との夜伽の時だけの快楽の交換であろうとも、今はまだかまわない。そう思いながら、リューンの背に手を回す。

アルハザードはリューンの身体を起こして、自分の胸にもたれさせながら抱くのが好きだった。そうしてやると、身体が倒れないようにリューンは自然とアルハザードの背に手を回してくる。その格好で身体を密着させ、首筋や唇を攻めれば、リューンの身体の震えがアルハザードの胸板に伝わり、もどかしげにアルハザードを抱える手が背をなぞってくる。

それに誘われるように胸の膨らみを揉み、その頂を指で焦らすように引っかくと、その動きに合わせて、背中の手にぎゅうと力が込められたり、指を立てたりしてくるのだ。リューンと触れ合っている箇所全てが、自分に何かを伝えてくる。それが楽しくて、いつまでもいつまでも焦らしながら、リューンの身体に触れる。

「リューン……」

耳元で息を吐きかけながら名前を囁くと、ピクンと肩が触れ、もう近づく距離など無いと思っていた身体がさらに深く密着する。リューンの頭を抱えて自分の顔に近づけると、アルハザードの耳元に彼女の唇が寄せられた。意図的にではないのだろうが、わずかに乱れた呼吸を耳朶に感じる。

アルハザードはリューンの首筋から背中に、つ、と指を滑らせてみた。ゾクゾクと背中を這うこそばゆい感触に、彼女の唇が動いて自分の耳をなぞっていき、誘われるように昂ぶるのを感じる。

リューンはずっと自分に応え続ければいい。自分もそれに見合うだけの手を彼女に与えよう。

アルハザードは彼女の身体を少し持ち上げ、自分のそそり立った中心に宛がう。

「リューン……名前を呼んでくれ……」

「……あ、アルハザード……っ……」

「く……リューン……」

彼女が名前を呼んだ瞬間に持ち上げた手を緩め、自分の陽根の上に落す。一気に入り込んだ衝撃で名を呼んだリューンの声が揺れて、呼吸が乱れる。入った瞬間、彼女の背が跳ね上がり弓なりに逸れ、ぎゅ……と締め付けがきつくなった。何度も貫いて、自分の形になっている彼女のそこは、ぴったりと密着して絶妙の弾力でアルハザードを誘うのだ。

「リューン、動かすぞ……」

リューンの腰を支えてゆっくりと動かすと、その揺れに合わせて彼女の呼吸が乱れ始めた。アルハザードがリューンを見上げると、黒い瞳は切なげに自分を見返してくる。彼の動きに合わせて、身体が揺れ、髪もそれに合わせて跳ねる。アルハザードの視線に絡められたリューンの瞳は泣きそうな表情で、唇が震えていた。そんな表情を見せられて、手加減など出来るはずがない。

「そんな瞳で見るな、……抑えられない」

アルハザードがリューンの顎のラインを唇でなぞりながら、濡れたような声で囁いた。

自分はどんな顔をしていたのか、羞恥でリューンは我に返る。だがアルハザードが彼女の気持ちを正常に戻すことを許すはずが無く、強く腰を引き寄せて、さらに小刻みに動かし始めた。リューンは、有無を言わせない快楽に、堪えるようにアルハザードの身体に体重をかける。

アルハザードは、逞しい肩に額を預けるリューンをさらに強く抱き寄せた。そうやって自分に体重を預けてくる、それはリューンにしか許さない行為だ。その甘さにアルハザードは彼女の腰を何度も突き上げる。

正面から抱き合い、身体を密着させて揺らされると、中も外も同時に刺激されてしまう。何度目だろうか。リューンは自分の背筋に波が登ってくるのを感じた。あまりに濃厚な刺激に喉が詰まり息が上がる。そして、自分が無理やり昇り詰めさせられていることに気づく。それはもう既に抗うことはできないところまで来ていた。

「アルハザード……っ、私……っ」

「ああ……かまわん、来い、リューン……」

低く掠れるような甘い声で「来い」と言われ、リューンの胸が狂おしく締め付けられた。その声はリューンを引っ張り上げ、それに合わせてアルハザードも高みを目指す。リューンの膣内が解けるように柔らかくなり、一転、急に締め付けるようにうごめいた。その誘いに任せてアルハザードも大きくそこに自分を吐き出す。

そうして逃れられない快楽を味わって、激しい荒い息を吐いていると、強張っていたリューンの力が抜け、アルハザードに全ての体重が掛かってきた。それを抱きとめながら、アルハザードは正しく理解していた。リューンが自分と共にそこで達していることを。

力が抜けていくリューンの身体を寝台に落すと、その身体の上に自分を横たえる。アルハザードはリューンから自分を抜いて、……だが、まだ衰えない自分の中心をリューンの下腹に押し付けながら、黒い髪を抱すくめた。

「アルハザード……?」

「俺が離すと思っているのか?」

独特の余韻に息を付きながら、リューンはアルハザードの名前を呼び、それに呼応するアルハザードの声は熱を帯びていた。

2人の熱い吐息と互いの名前を呼び合う声、体液が生み出す卑猥な水音がいつまでも部屋に響く。

****

「腰いたい」

「大丈夫か」

「……うおああああ、アルっっ……!?」

「なぜそんなに驚く」

覚醒した瞬間身体が軋んで、思わず起きぬけに「腰いたい」発言してしまった。油断しているにもほどがある。それほど深く眠り、ぱっと覚醒してしまったのか。どれだけ疲れてたんだ、ああもう、あれは無い。アレはない。どれだけ体力があるんだアルハザード。獅子王とか言ってる場合じゃない。やっと寝かせてくれたと思ったらもう朝だよ。しかも、いつもリューンが寝ている(フリをしている)間に退室しているアルハザードが今日は居た。何故居る。

「いつも朝起きたら居ないでしょう」

「居てほしいのか」

「あーまー……えー、でも、あんまり寝起き顔を見られるのは……」

「寝顔は見てもかまわんのに、寝起きの顔は見てはいけないのか」

「……もういいです」

アルハザードはその頬を指で軽く撫でた。

「寝起きの顔も可愛いと思うが」

「……はい?」

可愛い? アルハザードの口から可愛い!?……ちょっと待て何が起こる、今から何が起こるの。終末か、神々の黄昏ラグナロックか。……獅子王のニヤニヤ顔から紡がれた「可愛い」発言に背筋を凍らせながら、リューンは身体を起こした。早く起きないと、アルマが起こしに来そうだ

ふと、自分の裸のお腹に、もぞもぞとした違和感を感じる。触れてみた。

わあ。

わあ。なんか液体が乾いてパリパリしてる感じがするー。(棒読み)

「どうした」

リューンがお腹を触っているのを不審に思ったのだろう。いつもの低い声ではない。心配しているような色が加わっていた。

「いえ、何かパ……なんでも」

アルハザードが背後で起き上がった気配がした。後ろから抱き寄せるようにその腹に触れる。なるほど。パリパリしていた。ふん……と鼻で笑う。

「覚えがないな」

「無くていいです」

「腹には出していない」

「そういうことにしておきます」

「まあ、多少は溢れたかもしれんが」

「あふっ……、だ、大丈夫気にしてない!全然気にしてない!」

「じゃあ、次は腹に出してもかまわ」

「さーて、そろそろおきようかなー!」

というかもう、腹に出したかとか溢れたかとかぶっちゃけどっちでもいいから。っていうか今なんて言おうとしたよ。「腹に出してもかまわ」何がだよ、何をだよ。……もういいそれ以上……お願いだからそれ以上言わないでほしい。何なんだこの空気は……。恥ずかしさを隠すように、リューンは立ち上がり寝台から降りようとした。だが、後ろから抱き寄せるアルハザードの腕が強くなり、引きとめられる。

「どこへ行く」

「え、どこって……お、お風呂に入ってきます」

「風呂か」

「うん、……だから、あの、離して……」

「よかろう」

アルハザードは起き上がり、リューンの身体を寝台の上掛けで包んだ。「……えーとあの、あ、アルハザードさん?」戸惑うリューンを抱き上げ、ニヤリと笑うと彼女ごと寝台から降りた。その意味するところを理解して、リューンは赤面する。

「運んでやろう」

「いやいいです、自分で行けます自分で入れます」

「腰が痛いのだろう」

「い、いたいけど、そこはほら癒しの呪文でなんとか」

「一緒に入ってやろう」

「だから、人の話聞きなさいよ! 誰もそんなこと言ってないでしょう、いや、あの、ちょっと、ほんと、アル聞けというのにーーーーっ!」

聞いてない。

ちゃぷん。

数分後、リューンはしっかりアルハザードに抱えられて浴室に居た。

陽王宮の皇帝のプライベートゾーンに比べると、月の宮はこじんまりとした可愛らしい宮だが、当然、浴室は2人が入っても余りあるほど広い。魔法によって常に滾々とお湯が沸いて綺麗に浄化されて循環している。

リューンはいつも1人で入っているが、普通の姫君は幾人もの侍女にかしづかれて入るものなのだろう。そのせいだから広い……と信じたい。こんな風に皇帝と入る目的で広い、とか思いたくない。ああ、心底どうでもいいけど、朝日がまぶしいし、無駄に筋肉が目立ちますこのリアル獅子王め……。

アルハザードは座に身体を預け、リューンを膝の上に乗せた。耳に舌を這わせながら、手に取った石鹸でリューンの身体を弄り始めた。片方の手で腰をしっかりと抱きとめ、全身をくまなく洗い始める。

まず手、首……、そして後ろから手を滑らせて、下腹から胸の膨らみをぬるりと持ち上げた。普段とは違う、ぬるぬるした感触と恥ずかしさでリューンの息が上がっているのが分かる。

寝台よりも彼女の体の震えは分かりにくいが、昨日からの行為で感じやすくなっているのであろうリューンの身体は、時折ぴくんと伸びてその度に知らず腰が動いた。気づいているのか、その腰の動きがアルハザードの中心をいちいち刺激して、あれほど抱いたのにまた飢えを覚える。

だが、それを堪え、後ろから身体を密着させて足先から太ももまでをなぞるように石鹸で洗う。そして、徐々に彼女の秘所に指を伸ばす。手から石鹸の泡を落とし、ぬぷりと指を挿れた。そこは滑りを帯びている。散々吐き出したアルハザードの精か、リューンの愛液か。どちらもだろう。くちゅくちゅと指を出し入れして、混ざり合ったそれを中から掻き出す。

そのたびに彼女の背が動くのを感じられるように、後ろから首筋に額を宛てアルハザードは目を閉じる。ついでに肩口に後ろから口付け、そこをきつく吸い上げた。ちゅ……と小さく音を立てると、ぴりりとしびれるような痛みが走って、その意味を悟ったリューンは、あわててアルハザードの方を向く。

「ちょ……ちょっと、アルハザード!」

「なんだ」

「今、痕つけたでしょう……」

「それがなんだ」

「……いや、それがなんだじゃなくて」

「男はみな、印を付けたくなるものだ」

「だからって」

「なにをいまさら」

「首はダメだというのに……!」

「胸や腹に付け足りないのか?」

付け足りてます。

昨晩さんざん付けられた赤い痕は、胸やらお腹やらに散らばっていた。夢中になっていたときはあまり気にしなかったけれど、朝日の中でそれを認めるのは相当恥ずかしい。できるだけ服着れば外に見られないところに付けてくれているらしいけれど、今の首筋は反則だ。

顔だけ振り向いたリューンに「こちらを向け」と、アルハザードは身体の向きを変えさせた。今度は自分をまたがらせるように向かい合わせに座る。石鹸をリューンの手に取らせて、その手を自分の身体に滑らせる。リューンの指がアルハザードの身体を這い、その意図するところを知る。

……あ……、洗いっこだとう……!!!(衝撃)

「ななななななにを」

「早くしなければ終わらないぞ……?俺はかまわんが」

「お、おわらないって、な……」

アルハザードはまったく動じていない。面白そうにリューンの動きを眺めている。観念してリューンはアルハザードの身体に石鹸を付けた手を滑らせていく。腕、首、抱きつくように身体を近づけて背を擦る。……甘やかな細い指の動きに思わずリューンを抱き寄せ、荒くなっていく息を隠した。早く挿れたい。……が、もう少し。

手を突っ張るように身体を離して、今度は胸の筋肉の上に、両方の手のひらを滑らせる。先ほど散々リューンを責めた箇所を、今度はリューンの手が掠めるとアルハザードの身体がびくりと動いた。なぜかすごくいたたまれない気持ちで、リューンは顔を伏せる。その可愛らしい反応に、アルハザードは小さく笑い、好きなようにさせた。

腹筋、足、太ももを洗い、残る箇所は先ほどから存在を主張している部分のみになった。これはさすがに平静でいろというほうが難しい。リューンはあまりの恥ずかしさにアルハザードの顔が見れない。……おずおずと触れると、そこは当然のように硬く熱くなっている。そっと手に握りこみ、擦ってみた。

リューンの手に……アルハザードは思わず眉を潜める。余裕の無い自分がもどかしく、彼女の胸の膨らみに手を伸ばした。頂きを刺激すると徐々に屹立し、リューンの表情を見ると恥ずかしさの中に甘やかさを伴って息が荒くなってきているようだ。そんな顔をするな。そそる。

だが、あまり胸に触れていると、今度はリューンの手が疎かになる。アルハザードはリューンの手の上から自分の手を重ねて促した。先ほどからよほど恥ずかしいのだろう。リューンはアルハザードの鎖骨に顔を埋めて、表情を見られないように、再び手を動かし始めた。握りこみ摩って、先端をぬるりと撫でる。

「……ぅっく、リューン……っ」

石鹸越しとはいえ、リューンの手が自分に触れてくるのは初めてのことだ。他の女の奉仕など一体なんだったんだと思うほど、それは快楽だった。アルハザードはリューンから身体をいったん離すと、唇をゆっくりと重ねた。

両の手を後ろに回させ、アルハザードはシャワーの湯を出す。シャワーの水音で口腔内を動き回る舌の音は聞こえない。身体の石鹸の大方が流れると、アルハザードはリューンの腰を持ち上げ、ゆっくりと彼女の秘所に自分を埋めていった。

もうすっかり自分に馴染んだアルハザードのそれは、馴染めば馴染むほどに彼女の内壁に密着し、自由自在に彼女の感じる箇所を刺激する武器になっていた。挿れられると、蕩けるような安心感でリューンはアルハザードに抱きついてしまう。アルハザードはリューンがこうして時折ぎゅうと肩に抱きついてくるのが好きだった。

「……って、ちょっと、ま。って、アル!」

「なんだ」

「入ったまま移動は、さすがに、こわ、」

「重くはない。怖いなら暴れるな。すぐそこだ」

突如挿れられたまま身体がふわりと浮いた感覚に、リューンはびっくりしてさらにアルハザードに抱きついた。リューンの太ももを抱えてそのまま浴槽に歩いていく。そもそもアルハザードにリューンの体重などものの重さではない。リューンさえ手を離さなければ、楽に移動できた。

リューンは湯船でアルハザードと向かい合わせに密着する。

少し香油を垂らしたお湯が肌にすべらかで、いい香りだ。アルハザードはリューンの髪を愛しげに、触れながら耳を齧った。「……!!」ここを齧ると、いつもリューンの身体が跳ねる。同時にアルハザードの身体も反応する。彼女の中が収縮したのだ。アルハザードはリューンから己を抜くと、彼女を立ち上がらせた。後ろから彼女の両手を自分の両手で掴む。

そのまま浴槽に手を付かせて腰を突き出させた。リューンの両手をアルハザードの両手が後ろから押さえ、背中と筋肉が密着する。

ゆっくりと後ろから彼女の秘所に自分を埋めた。すでにどろどろになっているといっても、リューンの中は相変わらず狭くきつい。だが、抽送をはじめると、くちくちと音を立てはじめた。

「……っ、あ……アルハザ……ド……」

「リューン……」

自分の名前はこんなにも甘い響きだっただろうか。

アルハザードは性急でなくリューンの弱点をゆっくりと刺激する。朝日の中で濡れたリューンの肢体を眺めながら、それを愛でるのも悪くない。いつもと違う角度で、後ろから獣のように犯しているという状況も興奮させた。背中がかくかくと揺れ彼女の中がぎゅうと狭まってくる。

アルハザードは肘で太ももを支えると、両の手のひらにリューンの柔らかな胸を納め、その頂を指でつまみ、親指で弾いた。そうしてやると、彼女の秘所からまた液が溢れ出したのを感じる。

リューンの中はきついが、柔らかで温かく心地よい。アルハザードはリューンの片方の手を引き、一気にお互いの腰を自分に近づけると、そのまま大きく突いた。先端まで引き抜き、奥まで一気に突き上げる。彼女の弱い部分を狙った角度で、もう一度。腰を片手で浚うように支えて、もう一度。何度も、何度も彼女を穿つ。

やがて彼女の背が大きく一度揺れ、中がアルハザードにまとわりつくように動いたのを感じた。「……あっ、アルッ……」リューンがアルハザードの名前を呼ぶ。「リューン……、イクぞ……っ」リューンの奥が吸い付くようにアルハザードを締め上げてきて、同時に、彼もその中に欲望を吐き出した。

****

「えっと、そろそろ出ませんか。仕事じゃないんですか」

「そうだな」

「あのー」

余韻を味わうようにアルハザードはリューンを後ろから抱きしめ湯船に身を沈めている。「もうはずかしい……」観念したようにアルハザードの胸にリューンは凭れた。その様子にアルハザードは満足気に、濡れた髪の毛を指で梳いた。リューンはしばらくその手を楽しんでいたが、ふと気になって聞いてみる。

「髪が短いのって、そんなに珍しいのかしら」

「珍しいな」

「似合いませんか?」

「……いや、似合う」

突然可愛いことを聞いてきたリューンに、アルハザードは一瞬面食らったが、即座に答えた。

「だが、まあ、珍しいのは珍しい」

「そう。私の住んでる世界では、この程度の長さは普通に居たんだけど」

「ほう」

「アルは、髪が長いほうがよかった?」

リューンにとっては何の気もない質問だった。……だが、アルハザードは真顔で答える。

「いや、髪はいずれ伸びる。長い髪はそれから愛でればいい。せっかく今は短い髪のお前が見られるのだ。得をした」

「……」

何てこと言うんだこの男。リューンは一瞬甘い気分にさせられ、奇妙な敗北感を味わった。