結果的にもの申してよかったね、という話。
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音も無く、いや、荒い呼吸音だけを響かせて、アルハザードの顔がリューンの胸元に下りていた。片方の手は寝台に縫い付けるように押えているが、無理やりではなく指と指を絡めあっていた。もう片方の手は、お互いの身体を抱き寄せている。
アルハザードの濃い金色の髪がリューンの胸元に零れ、その下で舌が這っていた。やわらかい側面を舐め取るようにしながら中心へと進め、硬くなった頂を掠めるようになぞっていく。いつまでなぞっていたのだろうか。感じているのだろう。絡めあっているリューンの指は震えていて、抱き寄せている手には力が込められていた。やがて舌がなぞっていたそこを口に含む。温かい吐息ごと深く蹂躙されると、指で与えられるものとは違う、恐ろしく丁寧で濃厚な刺激がリューンの下腹を疼かせた。思わずリューンの片方の足が折れ曲がる。
それに合図に、アルハザードは胸から顔を離し、寝台の横に手を伸ばして水を飲む。熱っぽい瞳でリューンを見下ろすと、曲げた片方の足を抱えて、身体を下げていった。
今度は、ぴちゃぴちゃと、猫が水を舐めるような音がリューンの足と足の間から響いてくる。アルハザードの片方の手はリューンの足を押さえ、もう片方の手はいまだにお互いの手を絡め合っていた。
リューンの秘所の表面を舐め取っていたアルハザードの舌がさらに動き、蕾を包み込むように大きく捕らえた。いつにも増して強めにそこを押えるように舐めると、繋いでいるリューンの指がアルハザードの指を擦ったり引っかいたりしてくる。興に乗って舌の動きを変え、同じところをなぞったりつついたりして弄ぶ。やがて、リューンの手が強く握り返してくる。何かを堪えるようなその反応に、アルハザードはさらに奥を侵略すべく舌を差し挿れた。
要するに、先ほどから飽きることなくアルハザードの舌技が続いている。リューンは身体が甘く疼いて仕方がない。
なぜ。
なぜこの人は。
こんなに粘着質なんだ……。(主に舌が)
やがてアルハザードは舌を離して、唇を拭い身体をずらしてきた。リューンの身体を返し、後ろから上体を重ねて両手首を押さえ、今度は後ろから背骨と首筋に舌を這わせる。アルハザードは、いつもリューンの肌に味が付いているといわんばかりに舐めてくる。途中で水を飲んで休憩を挟むくらい舐めてくるのだ。そのいやらしい雰囲気と、舌が与えてくる感覚、そして荒々しい息遣いに、絡め取られるようにリューンの背が浮く。
アルハザードは少し身体をずらすと、手首を押さえていた両腕をリューンの身体の下に回して抱きすくめる。うつ伏せの横顔に小さく口付けを落すと、掠れたような吐息交じりの声で「お前の中に挿れたい……」とかなんとか、リューンを恥ずかしがらせるようなことを、いちいち言って聞かせ、……先ほどまでアルハザードが散々口付けて解かした箇所に、彼自身の屹立した猛りを合わせた。強くそこに力を込めると、アルハザードのそれはたちまちリューンの内奥に包まれる。温かくぬめっていて、やわらかいのに締め付けられ、アルハザードはあまりの心地よさに笑みが零れた。
「リューンのここは温かいな……」
「……っ、アル……」
アルハザードは何事かを愛しげに囁きながら、繋がっている箇所をゆるゆると動かして抽送しはじめた。
だからね、なんでこんなに粘着質なんですかこの人。
もういい。もう勘弁ならん。
ちょっと一言言ってやる。
リューンは自分を抱きすくめている逞しい腕に手を触れた。
「ね、え……、ア……アルハザード……」
「リューン、どうした……」
アルハザードはリューンの身体を、うつ伏せから自分の身体ごと少し横に起こして、しゃべりやすいようにしてやった。後ろからリューンのこめかみに唇を寄せて答える。支え直した腰の動きにリューンと合わさった箇所が思いのほか揺れて、妙な感覚が湧き上がり、思わず言葉が跳ねて途切れる。
「……ん……もっと、(淡白にやっ)て……」
アルハザードは驚きに目を見開いた。動きが一拍、止まる。
……もっと、(し)て……?
リューンの喉から零れた情欲に塗れた(ように聞こえた)催促の声に、無論アルハザードはこれまでに無いほど煽られた。理性の制御が、がちゃんと音を立てて外れる。アルハザードの息は荒くなり、リューンの身体を激しく後ろからまさぐり始めた。片方の手は胸を弄び、片方の手は繋がっている箇所に伸ばして、既に膨らんでいる蕾にぬるぬると触れる。
突如変化した刺激と、それがもたらす快楽に、リューンの息は詰まりそうだ。
「っ……く、リューン……、今そんなことを言うな……」
……え、えー……、ちょっとまてい、なんで動きがそこからさらにいやらしくなるんだ……!
リューンは焦ってアルハザードの名を呼んだ。後ろからの抽送と、与えられる刺激にさらに激しく声が揺らぐ。
「……ちょ……と、アル……っ」
「ああ……、リューン……、悪いが、俺もそれほど……余裕が、ない。……どこを(もっとしてほしい?)……っ」
え……、どこって、そういう問題じゃないし。
「ん……どこ(をやるとき)も、……全部(淡白にやって)?」
……どこ(で)も、全部……?
アルハザードの背がゾクリと震えた。なんという直接的な誘いの文句だ。悪くない。……とはいえ、先ほどからリューンの身体を動かす度に膣内が締まっては蕩けて、アルハザードの余裕は無い。リューンの肌を激しく嬲り、彼自身の抽送も最後に向けた動きになる。「……や……、アル、待って……っ!」リューンが何か言った気がするが、聞こえないフリをして弱い部分を責め立てると、彼女の身体に電気が走ったように背が逸れた。それを受け止めるようにきつく抱きしめて、アルハザードもその中で身体を震わせる。
アルハザードは一度抜くと、今度はリューンを仰向けにして、リューンが何かを言おうとするのを聞かず、正面から挿れた。まだ全く衰えていない猛々しいそれは、リューンの中にいやらしい音を立てて入っていく。先ほどまで挿れて動かしていたにも関わらず、まだきつい。それでも、ぴったりと彼を飲み込んで奥まで入っていく。
さあ、次はどのように弄ぼうか。何しろ、全部というのがお姫様の望みなのだから。
リューンの首筋に顔を埋め耳たぶを味わいながら、アルハザードはニヤリと笑んだ。まだ夜は長いのだ。
リューンはそれに翻弄されながら、思う。
……いや、だから、どうして、動きがいやらしいまま一晩中離してくれないんだよ、この変態……!
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考察: よく考えたら、言うタイミング完全に間違えてる。