浴衣のあやかさんに触りたいよ

『あやかさん、浴衣! 浴衣で行こうよ!』

山彦が彩花とそんな風に約束したのは、ちょうど1週間前だ。近所の河原でささやかな花火大会が行われ、近くの公園には夜店が出ると聞いて、行ってみようということになったのだ。その時に彩花は「浴衣」というものを着てくれるという。人間のお祭りも初めてなら、浴衣姿の彩花も初めてだ。そんなわけで山彦はかなり楽しみにしていたのだが、残念なことに夕方まで仕事が入っていた。夏は隔週土曜日が出勤なのだ。

ただこういうときは、別の楽しみもある。

それは「駅前で待ち合わせ」という楽しみだ。朝起きて一緒に準備をして一緒に部屋を出るのも楽しいけれど、こんな風に外で待ち合わせをして別々の場所から、彩花が山彦に会うために綺麗な格好をして待ってくれていたり、山彦の姿を探して見つけたりしてくれる。

花火大会だからだろう。バスや電車の乗り降りの人も多いし、待ち合わせの人もまた多かった。待ち合わせしていた男女がそれぞれの相手を見つけて、浴衣の姿を褒めたり照れたりしていて微笑ましい。だが山彦だって恋人と待ち合わせだ。手を絡めて公園に向かう恋人達を見ては、山彦もこれからまみえる彩花の姿を想像して胸が高鳴った。

仕事帰りの山彦はワイシャツにネクタイという格好だ。ネクタイを少し緩め、そわそわと駅前に視線を滑らせると、目的の人はすぐに見つかった。どんな女性よりも綺麗で素敵だから分かる。いつもは下ろしてゆるく巻いている髪は、今日はアップにしてうなじが見えていて色っぽい。

そして見知らぬ男に声をかけられていた。

ぎょっとした。

しかもその見知らぬ男は、彩花のうなじを覗き込み、袖から出た柔らかな手に触れようとしているのだ。

「あやかさん、あやかさん!」

「山彦くん?」

慌てて駆け寄り、彩花の腕を掴む。そして、真っ先に声をかけていた男の方に視線を向けた。男はもごもごと何かを言いつつ、その場を離れる。

男の後ろ姿はすぐに人ごみに混じって見えなくなり、山彦はほっと安堵したところで我に返った。

「……あ、あやかさん! 大丈夫だった? 触られてない? 変なこと言われたりされたりしてない?」

「え?」

「さっきの男の人! ナンパってそういうことするんでしょう? 絶対ダメ!」

「さっきの人は、キャッチの人だよ。ナンパじゃないから大丈夫」

どうやらキャッチセールスの類で声をかけられたのだという。彩花はそういうセールスはいつもきっぱりと断っていて、しつこく追いかけられたりもしないというが、あの男の視線は絶対それだけではなかった。

「でもあいつ、すっごくいやらしい目で見てたよ」

「気のせいだよ」

「気のせいじゃないよ。僕も男だから分かるもん」

すぐにでも抱き締めたかったが人ごみなので我慢して、山彦は彩花の細い指に自分の指を絡めた。そうやって肌のどこかに山彦の方から触れて、初めて本当の意味でホッとする。

彩花はしっかりしているが、女性なのだ。彩花は電車で痴漢に遭遇したこともあるというし、そもそも、別の男に触られている、見られているというだけで我慢できない。大切なものが衆目に晒されていて落ち着くはずがない。

だが人として生きている以上、それを回避するのは不可能な話だ。だから一緒に居る間は、山彦は彩花からずっと目を離さない。

「もう。気をつけてね。あやかさん」

「心配し過ぎよ」

「し過ぎることなんてないよ」

真面目な顔で言うと彩花が驚いたように目を見張り、嬉しそうに頬を染めて頷いた。

「分かった、ありがと」

「ん」

はにかんだように俯いた彩花の手を握ったまま、山彦は少しだけ離れてみる。

「あやかさん、すごく似合ってる。綺麗……」

「え?」

「浴衣」

そう言って、山彦はすぐに彩花に身を寄せた。腕をぴたりと寄り添わせ、彩花の指をにぎにぎする。

今日の彩花は本当に、今まで見たことの無い雰囲気で、だから見知らぬ男に少し声をかけられただけで焦ったのだ。

濃い紫色の地に白っぽい朝顔の花と蔓の柄が細やかに描かれていて、上品で……それでいて目の離せない色っぽさがある。横に纏めた髪は耳やうなじを露わにしていて、ゆるく巻いた後れ毛が山彦を落ち着かない気持ちにさせた。お風呂上がりのときなどもそうなのだが、首筋の後れ毛は男の指先を誘う呪いがかかっているとしか思えない。

そして、彩花の後れ毛には山彦だけが触れることを許されているのだ。

山彦は空いている方の手を彩花の首筋に回り込ませ、耳の下で揺れている後れ毛をそっと払った。

指先が首筋の肌を掠め、彩花がくすぐったそうに首を竦める。

「山彦くん?」

「ん。……行こ、あやかさん」

不思議そうに首を傾げていた彩花が、唇を綻ばせて小さく頷いた。

****

商店街から公園にかけて夜店が並んでいて、人出もなかなかの様子だ。人間の食べ物は大体分かってきた山彦だったが、夜店の類いにはまだまだ見知らぬ風なものが多い。いちご飴を買ってみたいと申し出ると、彩花は「最初からデザートね」と笑いながら一緒に食べてくれた。パリパリの飴を齧ると、中から柔らかくなったイチゴが出てくる。

「あやかさんこれ酸っぱい!」

「飴が甘いからね、きっと」

「そっか、甘いもののあとは余計に酸っぱく感じる……」

山彦が飴とイチゴの味わいの関係性について真剣に検討していると、隣の彩花が楽しそうに笑っている。

そんな風に歩いていると、人ごみに押されるようにして公園に到着した。もう人でいっぱいだが、公園には座る場所と、少しだが立ち飲みが出来るようなテーブル代わりの樽が用意されている。冷えたビールとたこ焼きを買って少し場所を探すと、運のいいことに立ち飲み用のテーブルが一つ空いた。

キンと冷えたビールの味わいも、誰かと一緒に食事をする楽しみも、手をつないで歩くことのできる喜びも、教えてくれたのは彩花だ。小さくて動けなかったサボテンの頃、夢の中でしか彩花に触れられなかった時は、彩花さえ居てくれればそれでいいのだと思っていた。けれど今は違う。彩花の見るものを、自分も見たいと強く願う。

「山彦くん、たこ焼き。食べる?」

「食べる」

彩花がたこ焼きの入った舟を寄せてくれたが、山彦は顔を下ろして、彩花が爪楊枝に挿しているたこ焼きを口に入れた。

「あ」

「おいし。でも小麦粉多いね」

「夜店のたこ焼きは、そういうところが楽しみなのよ」

粉っぽくて蛸が小さい柔らかい夜店のたこ焼きを食べ、プラスチックの使い捨てコップに入ったビールを飲みながら、浴衣の恋人と並んで夜の暑さを楽しむなんて、すごく、すごく、人間みたいだと山彦は思う。

「来年は山彦くんも浴衣着たら? きっとすごく似合うよ」

夜空を見上げて花火を待っていた彩花が、不意にそんなことを言った。え、と顔をあげると、空を見ていたはずの彩花はまじまじと山彦を眺めている。「細いけどしっかり筋肉ついてて首筋とかすごく綺麗だから、着物は多分似合うと思う」などと何やらぶつぶつ言っている彩花を見て、唐突に何かが腑に落ちた。

彩花の中で、ごく当たり前に「来年」の山彦がいる。たったそれだけの事に、じわじわと山彦の心が熱くなった。

「あやかさん」

そっか。来年。来年も、また、

「来年も、来ようね、あやかさん」

「うん。一緒に浴衣着よ」

サボテンの時にはまるで止まっていたかのような自分の時間。植物のそれは人間とは全くサイクルが異なる。永遠の場合もあるし、一瞬の場合だってある。……だけど今の自分には、人間としての来年がある。再来年も、その次も、きっとずっと、彩花と同じだけの時間だ。欲しいと思っていた、そしてとうとう手に入れたと思っていたけれど、理屈では理解していなかったその事実を、今ようやく理解する。自分はこれからもずっと人間なのだ。

きっと彩花は知らないだろう。山彦がどれだけ彩花と一緒に過ごす時間を渇望していたか。ただ「一緒にいる」というだけではなく、彩花と同じサイクルで一緒にいることが、どれほど山彦にとって奇跡的なことなのか。

「あやかさ……」

彩花の首筋に触れたくなって、山彦が指を伸ばす。……と、同時に、ヒュ……と笛を吹いたような音が響いて、ドン!と大きな音が響いて明るくなる。初めて聞くその大きな音に、山彦は思わず飛び上がった。

「うわあ!」

「上がった、山彦くん見て、あっち!」

彩花に腕を引っ張られて視線を向けると、次々に何かが空に向かって飛び出して行き、一番高いところまで到達したかと思うと大音量で弾けて明るく光る。感傷的になっていた心が一気に吹き飛ばされた。

大きな音が鳴る度に、山彦は彩花の手をぎゅっと握る。

人間になったのは嬉しいけれど、来年も一緒に来るのならこの大音量に慣れないと……山彦はそんな風に思う。

****

花火が上がりはじめると人も増え始めるので、抜け出せなくなる前に部屋に戻った。花火は部屋からも見えるし人ごみは疲れるよね、という彩花に同意した形だが、山彦としては早く彩花に触れたかったので好都合だ。

そうして部屋に戻り、コンビニで買ったアルコールとチョコレートも片付けて、もう花火の音は聞こえていない。その間、着替えようとする彩花をなんとかなだめて、あるいは懇願して、浴衣のまま顔を洗ったり歯を磨いたりも済ませた。

もちろん山彦自身もワイシャツにネクタイだ。彩花いわく、自分だけ浴衣できゅうくつな思いをしているのだから山彦くんもネクタイのままで居て、といわれた。その程度であれば安いものだ。

正直、彩花の浴衣姿は本当に可愛くて、そして男のいろいろな部分を刺激した。SPNで浴衣の女性の見所を検索してみたら、まずはうなじの色めかしさがトップに上がったが、山彦は袂から覗く腕の白さも好きだ。とにかく我慢できないし、もったいなかった。

だがそんな時間稼ぎもあっという間に間が保たなくなり、「お風呂沸かしてくるね」と立ち上がろうとした彩花を慌ててきつく抱き締めて止めた。反論の余地を許さぬように唇を奪う。

少し開いた唇に舌で触れると、迎え入れてくれるように彩花の顎が下がった。開いた唇に入り込み、彩花の舌と摺り合わせる。舌を捲り上げ、裏側の深くぬるついた場所をちろりと舐めた。

「ん……ぅ」

口腔内を支配しているために上げられない声はくぐもって聞こえ、柔らかい音程で山彦の聴覚を刺激する。空気の震えが音を伝え、耳元をくすぐった。

胸に手をやってみる。

いつもの柔らかみになかなか到達しない。むしろいつもより少し平かで、まるで上から押さえつけているようだ。んん?と思って手を止めた。

「あやかさん、何か入れてる?」

唇を少し離して聞いてみると、彩花の顔が急に真っ赤になった。

「き、着物とか着るときに詰めるものなの!」

何やら恥ずかしかったらしく、彩花は急に我に返ったように胸元を調えて身体を起こした。山彦の身体を少し離して、立ち上がる。

「やっぱり着替えてくる。ついでにお風呂も」

「やだ、ダメ、待って!」

離れた体温が惜しくて彩花の両腕を掴んだ。壁に押し付けて、先ほどと同じようにもう一度唇に触れる……直前で、かすめるほどの距離で、止めた。

本当はここで止めるのが優しい彼氏なんだろうな、そう思って、でも、止められない。

「やまひこ……っ、……ふっ」

かすめるほどの距離で止めていたのは一瞬で、今度は激しく唇を重ね合わせる。こじ開けるように舌を割り入れて、唇まで食むように大きく貪った。壁に彩花の身体を押し付けると、パチンと髪留めが取れて髪が肩に零れ落ちる。解けた髪から、まるで洗い立てのようなシャンプーの香りが漂って、引き寄せられるように耳元を齧った。

「あやかさん、大好き。浴衣のあやかさんに触りたいよ」

「……やまひこ、く、ん……っ」

彩花が山彦の名前を呼ぶと、その吐息が今度は山彦の耳を揺らす。微かに唇が触れて、それだけで山彦の背筋がぞくぞくと熱くなる。身体の中心が狭くなり、込み上げるような興奮を感じた。

腰を引き寄せる。

山彦の硬くなった中心を見せつけるように押し付けると、「は」と呼気が変わって、たったそれだけで堪らない。彩花がこの先を期待しているのではないかと、期待してしまう。

胸を暴くのは諦めて、首筋を齧りながら太ももの方へと手を滑らせた。重なっている浴衣の裾を掻き分けて手を忍び込ませると、何枚かの布を超えて下着に到達する。

「わああ!!」

「あやかさん?」

下着の布を撫でていると、再び彩花が色っぽくない声をあげた。手を止めて首を傾げると、またもや真っ赤な顔になっている。

「下着っ、可愛くないから、その……」

彩花はいつも上下お揃いの可愛い下着を身につけているのだが、今日はどうやらそうした下着ではないようだ。だからといって、彩花を好きな気持ちなど変わるはずがないのに。

「あのっ、やっぱりお風呂に入って着替えてから……」

「ダメ、下着なんて気にしないから、このまま触らせて」

「ちょっと、ま……っあ、わたしがっ、気にす……」

ふに、と下着の上を押さえ、指先で形を確認するようになぞっていく。強張った彩花の身体を支えるようにして、先日新しくしたばかりの寝台に連れて行った。なかばもつれ合うように広くなったマットレスに沈みこむ。

二つ並べた枕に彩花の身体を預けた。

彩花はここまできてもまだ観念しないようで、困ったようにいやいやと首を振っている。

「ね、ほんと、かわいくないから、着物用のパンツ……」

「もう! そういうの気にするの、可愛いのに」

だが、そんな彩花に優しい笑いが込み上げるだけだ。恥ずかしそうな彩花の顔が、可愛らしくて仕方がない。山彦が調べたところによると下着の可愛さとか上下の揃いを気にする人間は多いようで、それは恋人に可愛く思われたい女心、なのだそうだ。そう思うと可愛さも募る。

「じゃあ、見ないようにして、脱がせてあげる」

「え」

もちろん彩花に拒否権は無い。下着に触れている部分を頼りに、浴衣の中で作業した。

「足、少しあげて、あやかさん」

「ちょっ、と、あのっ」

「ほら、絶対見ないから」

強引に膝を立たせて、少し浮かせた足から下着を引き抜く。もちろん、引き抜く時にはぎゅっと目を閉じておいた。目を閉じたまま、引き抜いた下着を寝台のすみに押し込んでおく。

「見なかったよ、だからあやかさんを見せて」

言いながら、彩花の膝を立たせたまま開かせる。浴衣の裾が捲れ上がって、太ももの白が目に毒だ。

引き寄せられるように、その奥の、柔らかな箇所を目掛けて顔を突っ込む。太ももに優しく歯を立てながら、赤みがかった柔らかみの中心を人差し指で引っ掻いた。

「あっ、や、待って」

「待たないよ。待てない」

彩花の手が山彦の頭にふれるが、まるで撫でられてるようにしか感じない。びくびくと震える太ももの心地が彩花の感覚を伝えて、掻き出され始めた粘液はまるで花の蜜のようだ。

秘部を指で少し開いて、剥き出しになった花芽に舌を触れさせる。

「っ、ん」

彩花が息を飲んだ。

ねたりと一舐めすると、びくりと震えて足を閉じようとする。

だが、ぬかるみ始めた襞をめくり、その奥へ指を入れると、途端に抵抗する力が弱くなった。

花弁のようなそれに湧き出た蜜を擦り付けながら、指を二本、ゆっくりと挿入していく。膣内のお腹側をやんわりと撫でると、彩花の甘い声が上がった。そのまま、膨れた蕾を吸って咥え、舌で転がす。まとわりつく温かな膣内なかからは、先ほどからずっと、トロリとした蜜液が溢れていた。彩花が花ならきっととても綺麗だろうなと、いつも思う。

指は中を擦りながら、時々少し引き抜いてはじっくりと中に挿れる。その度に、くちゅ、と、まるでキスした時のような愛らしい、それでいて色めいた音が響いた。

「山彦く、ん……、もっ、」

「ん」

溢れてくる蜜が楽しくて、つい夢中になってしまっていた。顔を上げ、指は挿入したまま身体を滑らせると、そっと彩花の頬に口付ける。

「待ってて」

山彦は身体を起こすと、サイドテーブルの中に置くようになったコンドームに手を伸ばした。それを着けようと封を切ったところで思い出す。自分も服を着たままだった。どうりで下半身がキツイと思った。

下をくつろげて準備を整えるのも大分慣れた。ネクタイを緩めて外し彩花を見下ろすと、睫毛の長い潤んだ瞳と目が合った。

この、挿入する前のお互いの呼吸を合わせるかのような、それでいて照れくさくもある胸の高鳴る一瞬に息を吐く。浴衣のまま下半身だけを露わにした彩花の腰を引き寄せて、己の硬い熱を濡れた場所に押し当てた。

「っ、は……あ」

「ん、……んん」

もう何回も抱き合って知り尽くしているはずの身体なのに、挿入する瞬間の甘い衝撃はいつも油断ならない。先端が包み込まれると、きゅ、と収縮して、ぬるりと中に吸い込まれるようだ。粘液のぬめりと襞の締め付けを感じながら引き抜くと吸い付かれるようで、吸い付きに任せて奥を突くと、粘膜の心地が熱に絡みつく。

身体の下には浴衣姿の彩花があって、あふ、と息を吐きながら、山彦の動きに合わせて身体を揺らしている。少し緩んだ胸元からは鎖骨が覗き、汗ばんだ髪が張り付いていた。上半身は上品な葡萄色の浴衣姿なのに捲れた裾は乱れていて、掴んだ腰とつながりあった部分は肌色だ。その対比がひどくいやらしい。

彩花が手を伸ばすと、袂から白い腕が剥き出しになる。

身体を近付けると彩花に抱き締められた。

「あやかさん、好き」

「っふ、あ、わたし、もっ」

「う、ん」

かつては一方的だった触れ合いが、今はこうして双方向になった。彩花の身体の全てを、肌触りも、香りも、声も、そして見た目も、同じ人間としての感覚で受け止めることが出来る。そして、それはきっと彩花も同じで、彩花もまた山彦の身体を感じてくれているのだと思うと、愛しさだけで限界だと思っていた欲望が硬くなり熱くなった。

「あっ、や、も、また……っ」

「ん、っ、あ、あやかさん、僕も、一緒に……」

込み上げるものを感じる時、下半身の奥に心臓がもう一つあるかのような生々しい脈動を感じる。それに呼応するように激しくひくつく彩花に放つと、薄膜の中がじんわりと温かくなる。

いまだ彩花の中はひくりひくりと動いていて、このままずっと入っていたい衝動と戦う。

下半身の始末をして戻ってくると、彩花はまだ息を整えていた。少しは調えたのだけれど、帯から下だけがくしゃりと乱れて倒れ込んだ彩花の姿はとても気だるげで、見ているとまた心臓と……もう一つの場所がどくどくと鼓動し始める。

「あやかさん」

「ん、うん」

「お風呂入る?」

「ん」

「脱がせてあげるね」

「ん……」

いつもしっかりしている彩花だったが、こうしてくったりとしている時は、声も身体も甘えがちになって山彦は嬉しくなる。帯をゆっくりと解いていくのはさぞかし楽しいだろうし、その後お風呂に連れて行って、身体を洗ってあげるのもいいだろう。

しかし帯に手をかけて、山彦は、はて……と首を傾げる。

「これ、どうやって解くんだろ」

人間の男の人だったら、綺麗に解いてあげられるのだろうか。そう思っていると、彩花が山彦のワイシャツを引っ張った。

「帯、……山彦くん、帯、後ろ……解いて」

ぐたん……と彩花がひっくり返って、つい先ほどまでは綺麗に調っていただろう帯結びを見せてくる。きっと締め付けてて苦しかったんだと反省して、見えている帯の先をゆっくりと引いた。

見た目よりも案外簡単に帯は解けて、浴衣越しに腰付きと背中のラインが露わになる。浴衣を着た女の人の腰の丸みもすごく可愛い。もっとよく見ておけばよかった、と猛省する。

「あやかさん!」

「うあ」

思わず彩花の背中に被さると、重さで、彩花がぐえ、と変な声を出した。

「あやかさんあやかさん!」

帯の解けた彩花の身体を背中から抱き締めて、すりすりとうなじに鼻をすりつける。

初めて見る浴衣、初めて脱がせた浴衣はとてもいいものだった。来年は彩花が恥ずかしがらないようにもっとスマートに脱がせたり、もっとスマートに楽しめるようにがんばらないと。

しかしその前に、さしあたりお風呂の上手な入り方を実践しようと思った。


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