第3章 魔法使いの弟子

039.もう一度俺の名前を呼んでくれ

室内に重苦しい空気が降りている。
誰も一言も声を発することが出来なかった。

「サティ……いつも俺は、お前に庇われてばかりで……どうしてこんなことに……」

ピウニー卿はサティにぴったりと身を寄せた。こうして毛皮に手を埋めればまだ温かい。だが、いつもゴロゴロと心地よく鳴っている喉は今は動いていなかった。

尻尾はぐったりとうなだれ、いつも膨れて感情を表す毛皮は静まったままだ。ピウニー卿が語りかければぴくぴくと動く耳は、力なく寝そべっている。そして何よりも、ピウニー卿の心を騒がせて止まない綺麗な、宝石のような大きなグリーンの瞳は閉ざされている。それをもう一度見ることが出来ないなど、信じられなかった。

そうだ、信じられない。

サティの声を、もう二度と聞くことが出来ないなんて。

「サティ……サティ……愛してる」

ピウニー卿はサティの口元にそっと顔を寄せた。

「愛しているんだ、……だから、もう一度」

サティの口元をぺろりと舐めた。

「もう一度俺の名前を呼んでくれ。サティ」

ピウニー卿は、動かないサティの口元をぎゅう……と抱きしめた。

それでも、サティは目覚めなかった。
ピウニー卿の声にも答えなかった。
口元は動かない。耳も、毛皮も……。どうして……。

「サティ……」

セピア色の毛皮に前足を埋めて、ピウニー卿はいつまでもいつまでも寄り添っていた。離れることなどできるはずが無かったのだ。

やがてそのこげ茶色の瞳から、ぽろりと涙が一滴落ちて、サティの口元とセピア色の毛皮に浸み込んでいく。

そして。

 

「ん……ピウニー……。ひーげ……。ひげくすぐったい」

 

ピウニー卿の髭の動きがピタリと止まった。セピア色の尻尾がぱたりと動き、三角の耳が前後にふるん……と震える。むずがるように瞳を一度ぎゅ……と瞑って、瞬きをするとそこが開いた。ピウニー卿は少し離れて、しげしげとそのグリーンを見つめる。その様子を訝しげに見ながら、サティは身体を起こそうと少し首を持ち上げた。

しょっぱ。

なにこれ口の中しょっぱい。

もぞもぞと、サティが前足で口元を拭いている。

「サ」

「サ?」

サティが身体を起こそうと、前足の動きを止めた。
ああ……、サティが、動いている!

「サティ!」

「ふごっ……!?」

サティの口元が抱きついてきたピウニー卿の身体で塞がれた。

****

「サティ! 生きていたのか!……よかった……本当によかった」

「ひょ……!?」

ピウニー卿が口に張り付いていて、サティは上手く話す事が出来ない。起き上がろうとしたところにそんな状態だったものだから、サティは手足をばたつかせながら転がった。そこにラディゲの手が伸びてきて、ピウニー卿を剥がす。魔竜がその様子を見ながら、むふう……と安堵したように息を吐いた。

「おいこら、ラディゲ、離せ。離せ、……ああ、サティ!よかった、こっちを向いてくれ。サティ……!」

「分かった、分かったから、ちょっと落ち着けピウニーア」

「落ち着いていられるかこれが!……ああ、サティ……!」

サティがふるふると身体を揺らして起き上がったのを見計らって、ラディゲがピウニー卿を下ろしてやった。駆け寄ってくるピウニーに応えるようにサティは頭を低くし、セピア色の毛皮を擦り付ける。ああ、確かにサティの毛皮だ。動いている。尻尾がぱたりぱたりと揺れ、耳が時折ぴくんと裏返ったり、こちらを向いたりしていた。

「こら、ジョシュ……!」

「サティ……!よかった」

国王の腕を振り切ってジョシュが駆け寄り、サティの背を撫でる。抱き上げなかったのはピウニー卿に遠慮したからだろう。

「サティのバカ!!……ヴェルさんと後から来てみたら、こんな……こんな……ピウニー卿! ……貴方がついていながら、どういうことですのこれは! 説明していただかないと気がすみませんわ!」

「……あの、プリムベルさん、とりあえず無事だったんですしよかったということで……」

「なにがよかったんですの……! ああ、でも本当に、よかった!」

魔竜ではないのに炎でも吐きそうな勢いで、プリムベルがやってきて、彼女は遠慮なくサティを抱き上げてぎゅうっと抱きしめた。ヴェルレーンの手を払いのけて、きっ……とピウニー卿を眼鏡の下の眼力で怯ませたが、やさしい理の賢者の手が下りてきて、プリムベルからサティをそっと放して、ピウニー卿に返してやった。

サティは1人訳が分からないまま、頭を振っている。確か、自分はヒューリオンの呪いを受けたはずだ。ピウニー卿が狙われていることを知って、咄嗟に身体を伸ばした。何が起こるか……などという計算は、一切出来なかった。ただ、魔法を受けるのは自分だ、そう思って飛び出したのだ。自分の身体が急に重くなって、息が詰まって、周りから音が消えた。……と思った次の瞬間、ピウニー卿の声が聞こえたのだ。そうだ、ピウニー卿の声が聞こえた。なんと言っていただろうか。ええと……確か……。

「サティ」

これだ。

「サティ」……と言いながら、口を塞いでいたのだ。間違いない。それにしても、一体何が起こったのか。

「……ふぉふぉふぉふぉ、愛、じゃのう愛! ここでも例外処理が働いたのう……!」

「……例外処理?」

サティとピウニー卿以外は聞いたことの無い言葉に、全員が理の賢者の発言に注視する。

途端に、ボフッ!……とサティの毛皮が膨れた。ピウニー卿がそんなサティを心配そうに見上げて、前足をすりすりと撫でる。「サティ? どうかしたのか、毛皮がものすごく膨れているぞ!」……ってピウニー、そこ指摘しなくていいから!

そんなことよりも、師匠。たった今……愛って言った。主要人物全員が執務室にいるこの空気で言い切った。事態がさっぱり飲み込めないサティは、恐る恐る理の賢者に問う。

「ちょ……と、師匠、事態が把握できてないのですが、あのどういう意味で……」

「ふぉふぉふぉ……サティや。ピウニー卿が、お前さんの死の呪いを解いてくれたのじゃよ」

「……え?」

サティが、ちらりとピウニー卿を見おろした。こげ茶色の瞳が自分を見上げていて、うっとりと細まっている。

「ああ、……俺のおかげかどうかは分からないが、だがお前が無事で本当によかった……」

「ピウニー……」

ピウニーが? 死の呪いを……? サティは、胸が熱くなって思わず、頭を下げてピウニー卿の頭にセピア色の毛皮をくっつけた。だけど、

「ですが、どうやって……?」

サティの問いに、理の賢者がふんぞり返ってどこかで聞いたような台詞をのたまった。

「古来より、恋人のことを切に想って流した愛と真心のこもった涙は、ありとあらゆる呪いを解く妙薬になるのじゃろうて」

全員が、呆気に取られて理の賢者を見ている。バジリウスですら、例外ではない。そんな中、プリムベルがキラリと光る眼鏡の位置を直しながら、厳しい瞳で賢者の言葉を反芻した。

「恋人のことを切に想って流した涙……?」

「……なんと……」

サティを撫でていたピウニー卿がふるふる……と頭を振り、ふー……と、感慨深げに溜息を零した。つまり、ピウニーが自分のために、涙を零した……ということ? それが呪いを解いた、ということだろうか。サティは何かを言おうとしたが、ピウニー卿がその前にこほんと咳払いをした。再びセピア色の前足を撫で始め、悪気無く首を傾げて問う。

「しかしその例外処理は、1回きりという約束ではありませんでしたか?」

「1回、きり……?」

室内のプリムベルの声がピウニー卿の言葉をうさんくさそうに繰り返した。嫌な予感がして、再び、ボフッ!……とサティが膨らむ。理の賢者がふぉふぉふぉ……と髭を撫でた。

「例外処理が1回きりなのではないぞ。チッスによる呪い解除のお約束が1回、涙も1回じゃ」

「はい?」

これはプリムベルの声だ。

「チッスが1回じゃ」

「なんと言いまして?」

「愛と真心のこもった恋人同士のチッスが1回じゃ」

聞こえなかったかの?……と満足げに、理の賢者が頷いた。

「それってもう既に1回ヤりやがった……ってことですか?」

プリムベル、声が、声が大きい!

「そりゃあ、そうじゃよ。ピウニー卿とサティの、獣の姿の呪いが解けた話は、聞き及んでおるじゃろう。あれじゃ、あれ。のう、サティや?」

サティは完全に沈黙した。サティの毛皮は膨れっぱなし。瞳孔がまん丸でグリーンの瞳はほとんど黒だ。今までそこ、頑張ってぼやかして説明してきたんですけど……。あまりの状況にいたたまれないサティだったが、理の賢者はにんまりと笑う。

「昔から、涙というのは不思議な力を持っていると言われておってのう。それも、恋人のことを想った愛の詰まった涙は、どんな呪いも解くといわれておる。恋人の顔に涙が落ちると、それが救いの力になる……とな。まさに、世界の願望と夢と希望で出来た例外処理の1つなのじゃ!」

今日ばかりは言わせて欲しいとサティは思った。

師匠。

そのほくほく顔やめて!

「もっとも、その例外を短い期間のうちに2回も見たのは、ワシも初めてじゃったのう……。何せ、大抵が愛する男からのチッスか乙女の涙か、どちらかじゃ。それも最後の最後、美味しいところにもってくるもんじゃ。……じゃが2人はしょっぱなに、サティからピウニー卿に……じゃったじゃろ? 積極的すぎて、ワシも心配じゃったのじゃが……」

「はぁん、しょっぱな? しかも、サティからピウニー卿に?」

「じゃが、2回目はピウニー卿の涙がサティを救うとはのう」

師匠何度も言わなくてよろしい。それにプリムベルの声が怖いし、全員の生ぬるい雰囲気が痛い。ピウニー卿がこれまた平然とサティの前足を撫でているのが腹立たしい。

しかも、なぜか憤慨したピウニー卿が一歩前に出る。

「涙は……まあ。その……。しかし、最初のキスの時は、私だけではなくサティの呪いも解けたので、一概にサティからだけとはいえません。男として私からの分も含まれて……」

「いやーーーーー!! それ以上言わないで、ピウのバカーーーーーー!!」

サティはずさささーーーと魔竜の背に登り、その羽の付け根に頭をぐいぐいと押し付けた。隠れようとしているらしい。魔竜はきょろきょろと自分の背のサティを振り向く。

『サティ、我も知っておる。あの時のサティの口付けは、本当に心がこもっていて我も……』

「やめて! マハ、それ以上言うの止めて! プライベート、プライベートだから!」

「……」

実のところ、魔竜から愛の例外処理とやらのくだりを散々聞かされていたラディゲには、腹一杯の話だった。

「ラディゲ黙って!」

「俺は別に何も言っていない。どうでもいいが、なんなんだこの夫婦漫才は」

「もう黙ってーーーーーー!」

離れてしまったサティをピウニー卿が追いかけて魔竜の背に登っていく。「ああ、サティ……! 逃げないでくれ」と悲痛そうなピウニー卿の声に、「逃げてないぃぃ」……と言いながら、なお魔竜の羽に隠れようとしているサティ。そんな2人を見ながら、脱力したヴェルレーンは、座り込んだプリムベルをエスコートして立ち上がらせながらため息をついた。

「理の賢者殿、あれ絶対最初から知ってましたよね……?」

「そうですわね……」

「遅かったかとか、かわいそうに、とか言ってませんでしたか?」

「心からの涙でなければ、呪いは解けませんわ。だからこそ、お父様は……」

「わざとピウニー卿を誘導した?」

「いえ。我が父ながら、そうだったらいいなと思っただけです」

「ああ、そうですか……」

プリムベルが眼鏡を直しながら、ヴェルレーンの呟きに応えた。

その会話が耳に入ったアルザス家の2人とヴィルレー公爵は、理の賢者を敵にまわしてはいけない……などと思った。

****

仲間たちに囲まれて、ひとしきり祝福されているサティとピウニー卿達から理の賢者が離れ、ジョシュは国王と共にバジリウスの前に立つ。

「バジリウス……」

「陛下」

「ジョシュの話は聞いた。……ヴェルレーン卿から、魔竜の呪いと第5師団での死霊魔法研究についても聞いている。何か申し開きはあるか」

「いいえ。全て私のしたことにございます。陛下の御心をお騒がせしましたことを、深くお詫び申し上げ、いかような処分も受けましょう」

バジリウスはヒューリオンの身体を片手でそっと抱き寄せたまま、跪いて頭を深く下げた。

ジョシュがけほ……と咳き込みながら、国王の隣に並んだ。国王がその様子を見咎め、背中をさする。ジョシュの後ろには理の賢者が並び、慈しみに溢れた手でその頭を撫でた。

「ジョシュ。……お前はいかようにしたい」

国王が、王太子へと……バジリウスの処分について、意見を求めた。その質問に、ジョシュは国王を見上げ……バジリウスに視線を戻す。バジリウスが跪いたまま、視線を上げた。それは許しを請う瞳でもなく、労しげな瞳でもなく、ただ、臣下の瞳だった。ジョシュはその視線を静かに受け止め、首を傾げる。

「バジリウス宰相。……国のために、そのために僕の魔力を抑制したの?」

「殿下を無為に、死なせぬためです」

「6歳の頃から?」

バジリウスは苦笑する。

「知っておられましたか」

「勉強、したから」

ジョシュの言葉に、嬉しそうにバジリウスは瞑目した。

「ご立派な王になられましょう」

「……そのための何もかもを、僕は知らない」

「これからお知りになればよろしい。殿下の周辺には、どのような人材もおりますゆえ」

「そうだね」

「お恨みになりますか?」

ジョシュは静かに首を振った。

「もう少し時間をもらって、魔法のことをきちんと学んだら、魔力を持って生まれた僕の、それは仕方のないことだと受け止められる。だけど1つ聞かせてほしい。……もし、母上に弟が生まれたら、僕を死なせてもよかったと思っている?」

「陛下の御前で、残酷なことをお聞きになる」

バジリウスは、ふ……と笑った。そこまで非道になれればどれほどに楽だっただろうか。

「……師匠」

「なんじゃ、バジリウスよ」

「師匠は、いつからご存知でしたか」

理の賢者の下を辞したはずであったが、バジリウスは理の賢者を「師匠」と呼び、理の賢者もまたそれを否と言わない。魔法使いの弟子の絆は、そういうものなのだ。弟子の質問に、理の賢者は「ふうむ」と唸って、髭を撫でた。

「サティがジョシュ殿下の魔法陣を発見したタイミングは知っておるじゃろう?」

「猫が迷い込んだ……と」

「その話を、サティがワシに話さんわけがあるまい?」

そして、バジリウスが組んだ魔法陣を、理の賢者が一目見て分からないはずがないのだ。

「陛下には?」

「理の賢者より書簡をもらった」

その質問に答えたのは国王だった。国王の声には苦々しさなどは無く、むしろ悲痛な表情をしていた。バジリウスはため息を付く。魔竜によって国を乱し、息子にあのような魔法を施した男を、何故「哀れむ」のか。だから、この国王は甘いのだ。しかしその甘さは国王の威厳が程よく中和し、寛容となって多くの臣下と国民から慕われているのを、バジリウスは一番よく知っている。

「なるほど。……私の敗北は、その時点で決まっていたというわけですな」

「敗北ではないよ。バジリウスや。ワシが来ると分かっておったのじゃろう? それだのに、ワシが来るまで術を解かなんだ理由はなんじゃ」

ふぉふぉふぉ……と、理の賢者の口調は驚くべきことに苦笑だった。理の賢者が来ると分かった時点で早々に術を解き痕跡を消してしまえば、その後何が起ころうともバジリウスの罪は問われなかっただろう。それをしなかったのは、理の賢者が世界で最も安全に、ジョシュの解呪を行うことができるからだ。理の賢者に王太子を奪われたとしても、それでジョシュが生きるならば。……バジリウスは、魔力抑制が自分の責だと重々承知しながら、ジョシュの命を師匠に預けたのだ。

「師匠、ジョシュ殿下をいかようになさりますか」

その言い様に、理の賢者が首を傾げる。

「どういう意味かの」

「……殿下の魔力は……」

貴方の次代に匹敵するでしょう……と言いかけたバジリウスを、理の賢者が遮る。

「バジリウスよ。賢者の道というものはの、選択の余地が無いものではないのじゃ。魔力に左右されるものではなく、ただ、意志の力にのみ、左右される。道の極みを求めるものに与えられ、道を歩く意志を持ったものに示される。その意志が無ければ、到底こなせぬ役割なのじゃよ。ジョシュ殿下の覚悟は既に別にあろう。それはワシすら干渉できんものじゃ」

理の賢者の声はいつもの飄々としたものではなく、その場を圧倒する威厳のあるものだった。名前を呼ばれたジョシュは、何の話かよく分からずに首を傾げていたが、その声に思わず聞き入っている。サティは魔竜の背の上で、真摯に師匠の話に耳を傾けた。

「残念なことにのう?」

だが、その威厳のある声色はすぐに静まり、理の賢者は茶目っ気を含ませた声でジョシュに向かって片目をつぶった。

「……なるほど、全て杞憂でしたか。もう何も言いますまい。師匠にお任せいたしましょう」

「うむ。弟子の不肖は師の不肖じゃ。しかしバジリウスよ、魔竜の件は、なんの咎めもなし……というわけには参らぬぞ」

理の賢者の言葉に、グルル……と魔竜が唸る。

「分かっております」

バジリウスが沈黙すると、国王がジョシュの背中を押した。ジョシュがバジリウスの前に出てきて、バジリウスは再び臣下の礼を取る。

「バジリウス宰相は、以前、オリアーブから海を越えた東の大陸と、交易の可能性を示唆する話を聞かせてくれたことがあるね。異なる文化や魔法体系があるけれど、それと積極的に交易している国は、いまだオリアーブ周辺には無い、と」

「よく覚えておいでで」

ジョシュは頷いて、別のことを口にした。

「……僕は、バジリウス宰相のことを恨みには思っていない。だけど、何の処断も下さないというわけにはいかない。魔竜の意見も取り入れる」

「生かせば国を害するかもしれませんよ、殿下」

皮肉げに、小さく笑ったバジリウスにジョシュは首を振る。

「それならば、もっと早くにやっていたはずだよ。バジリウス宰相。これほどの人たちが、集まってしまう前に」

ジョシュが、父である国王を見上げた。その視線を受けて、国王は頷く。

「よかろう。ジョシュ、お前の意見は分かった。……バジリウス」

バジリウスが瞑目して、国王の前に頭を下げた。

「沙汰は追って申し渡す」

微かに息のある小さなオコジョの身体を撫でて、バジリウスは再び深く一礼した。