「ちょっと、や……ピウニーどこに触ってるのよ」
「ダメ……か?」
「……ダメじゃない、けど」
「……ならば、サティ、今、いいか……?」
「……もう眠いから、……ちょっとだけだよ……」
「……ああ……触るだけだ」
「……しょうがないな、もう……」
「……分かっている、……とても、柔らかいな……」
「ちょっと、ピウ、変な風に、触んないで」
「ああ、ずっと……触れたかった。こうして……」
「……ピウ……」
「それに、綺麗な色をしている……」
「あんまり見ないで……」
「……普段は見えないだろう?……だから、今だけでもこうして見ていたい」
「……ピウニー……」
「なんで、そんなに肉球好きなの」
「サティだって私の腹に触りたいと言ってるではないか」
「いやまあそうだけども」
ピウニー卿はどうしても、どうしてもサティの肉球に触ってみたいらしく、隙あらば前足を捲ろうとしてくる。寝ているときに急に前足裏を触られるとくすぐったくて仕方が無い。
だからせめて事前許可制にして……と頼んだら、「今触りたい」「今いいか」「今日いいか」「今晩いいか」……と、しょっちゅう聞いてくるのだ。
別にかまわないんだが、どうしてこう、肉球触るの好きなんだろう。サティは自分のに触ったことが無いから、まったく理解が出来ない。ピウニー卿のお腹に触ってみたいのと同じだと言うが、なんだかちょっと腑に落ちない。
前足を見ながら、何がいいんだろう……と、サティは考え込む。
「そんなに、柔らかい?」
「ああ、とても」
ピウニー卿はふにふにとサティの肉球を撫でている。野菜を両前足で掴んで食べているときと同じ位、瞳を細めてうっとりしている。
サティは自分の前足をしげしげと眺めた。
毛皮に斑が無いからなのか、肉球には何の柄も浮かばず薄いピンク色だ。今は浄化の魔法でつやぴか。子猫みたいだった。
「ピウ、優しく触ってよ」
ピウニー卿がハッと顔を上げた。
「サティ、今の台詞をもう1回……」
「だから何の話よ」
「い、いや……」
がんばれ!ピウニー卿!リベンジだ!!
ちょっと変態度が上がってきているぞ!